足の向く方に歩いてみた

先週土曜日13日、私は郵便局に用事があったのだが、土曜日ゆえに休日も窓口業務を行っている区域の本局(集配局)に出向かねばならなかった。我が家からは恐らく1km強で、電車はもちろんバスを使うべくもないし、自転車も都内は歩行者が多くて乗りにくいのが常である。というわけで、徒歩で向かった。水戸街道国道6号線)に面するそこには10分くらいで着いた。

用事はつつがなく片付いたのであるが、せっかく外に出てきてしまった手前、このまま帰宅するのは何だか口惜しい気がしてきた。私は根がヒキコモリなので、どうせ帰ってもパソコンの前に座っているのが関の山なのである。

私は前々から考えていた。自分の住んでいる地域を知りたいと。現在の住居には去年の春から1年半ほど住んでいるが、実は、どこにどんな店があるかとか、あまり詳しくない。自宅から歩いて1分のところに郵便局(無集配局)*1ことも知らずに、駅向こうのちょっと遠い郵便局(同じく無集配局)まで行っていた。私は根がヒキコモリなので、目的地のない散歩やドライヴはできないタチなのだ。

私は水戸街道から、柴又街道、すなわち京成金町線に並行する小道を選んで歩き出した。このまま同線・柴又駅(映画『男はつらいよ』で有名な柴又帝釈天の最寄駅)を経由して、同線・京成高砂駅まで行ってやろうと思ったのだ。

葛飾区とはご存知下町である。関東大震災や第2次大戦であまり被害を受けず、その後の大幅な復興の手が入らなかったのか、とにかく道路が狭い。メイン・ストリートと思しき道路も2車線である。歩道は人1人が歩ける程度の幅である。またそれに添って林立する建物も低くて、古い。戦前から、もしく戦後すぐに立てられたようなたばこ屋(但し営業はしていなかった)も見かけた。

京成高砂駅に着いたのは、前述の郵便局を出てから確か1時間程度経過した頃だったはずだ。私の足が鈍足であることを差し引いても、さほど距離は感じなかった。この駅は京成電鉄の車両区*2があり、また同駅は京成本線、同押上線、同金町線、北総線のジャンクション駅で、更に北総線の終点・印旛日本医大駅(千葉県印旛村)、もしくは京成本線の終点・成田空港駅と、都営浅草線押上駅泉岳寺駅)を経由して京急空港線羽田空港駅、あるいは京急久里浜線三崎口駅(神奈川県三浦市)まで直通運転を行うという、最大4路線(北総、京成、都営、京急)間、総距離は100kmを超える首都圏大動脈の駅*3のため、これらの鉄道会社の様々な車両が、まさに目まぐるしく入線してくるのである。しかも地上駅で、昨今増える地下駅に比して写真が撮りやすく、カメラを持った鉄道ファンにとって同駅は、絶好のフォーカス・ポイントなのだそうだ。私は路線オタクなので車両には大して興味はないが、それでもここまで毛色の異なる車両が入ってくることには、まばたきも忘れる。また車庫に留置されていた地下鉄である都営浅草線5300形を発見し、太陽の下で目の当たりにできたことに、感慨もしたのだった。

そして私は、そこから1つ先の駅である青戸駅を徒歩で目指そうとした。どの道どこかで電車に乗って帰ろうとは思っていたが、ならばせめて正式な京成押上線の始点*4である同駅で同線に乗って帰ろうと思ったが、道に迷ってしまった。というのも京成高砂駅から先は高架化しており、更に建物があって線路に添って歩けなかったのだ。なので私は口惜しくも京成高砂駅に引き返し、大人しく電車に乗ることにした。敗北感である。

しかし、都営浅草線京急空港線直通の京成押上線・エアポート特快*5羽田空港行に乗ることだけは絶対に譲れなかった。都内を走る地下鉄の中で、一部の駅を通過する優等列車を運行させているのは、東京メトロ東西線、都営新宿線、都営浅草線の3路線のみである*6。このうち東西線は地下区間では全車両が停車し、快速運転は地上に出てからであるので、やや例外的である。そして浅草線においては、京成線もしくは京急線から直通されるエアポート特快の電車のみ、地下鉄線内で優等運転がなされるのである。「快速」や「急行」などの種別の車両は、地下鉄線内各駅に停車してしまうのである。つまりレアである。

私がホームに急ぐと、私の普段の行いがよいからだろうか、タイミングよく、次発はエアポート特快・羽田空港行だという。程なくして電車が到着する。しかし残念なことに、車両はやや見慣れた京成車であった。できれば京急*7、譲歩してもせめて都営車に乗りたかったが*8、エアポート特快は昼間帯20分に1本しかないので、それらを待つ余裕はなかった。

私のエアポート特快は、京成高砂駅の次の青戸駅に停車したのち、押上駅まで京成押上線の全駅をすっ飛ばし、地下駅である押上駅*9から浅草線となり、私が降りることになる東日本橋駅まで浅草駅のみ(本所吾妻橋、蔵前、浅草橋の各駅は通過)に停車した。もう少し地下鉄線内の優等運転を満喫したかったのだが、次に乗り換えるのもまた地下鉄線内で優等運転をする都営新宿線である。と言っても、1駅しか乗らないのだが。

都営浅草線東日本橋駅と都営新宿線馬喰横山(ばくろよこやま)駅、更にJR総武快速線馬喰町駅は、駅名こそ違えど同一駅として指定されている*10馬喰横山駅から私は新宿駅行に乗った。そして次の岩本町で降りた。意外に知られていないが、岩本町駅秋葉原電気街の最寄駅の1つ(JR/東京メトロ秋葉原駅は言うまでもない)*11である。事実、駅出口から1分も歩かないうちに、東京メトロ秋葉原駅の出口と「書泉ブックタワー*12が見えてくる。



東京メトロ秋葉原駅の5番出口


なお、目的地に秋葉原を選んだことに他意はない。強いて言えば、翌日にここで催される或るイヴェントの下見とでもしておこう(そのイヴェントについては、余裕があれば是非後述したい)。

しかし、講談社アフタヌーン』誌連載中のマンガ『げんしけん』(作・木尾士目)の主人公達は、東京都多摩地方にあると思しき彼らの「椎応大学」*13から秋葉原へ向かうのに中央線を利用しているが、中央大学の鉄道の最寄駅は京王線高幡不動駅*14である。ならば京王線相互直通運転している都営新宿線京王新線笹塚駅あたりで乗り換えて岩本町駅で降りて秋葉原に行かせるならば、「オタク青春群像劇」としてより深みが増したであろうというのは、鉄オタが独りごちただけである*15



▲JR・秋葉原駅の電気街口前にあるラジオ会館


このあと、埼玉県在住の友人がこの日東京に出てきていることを思い出し、夕飯を食おうと電話をかけたところ、JR京浜東北線で帰るところだったという。王子駅を通過したところだったというので、引き返してもらい、秋葉原で焼肉を食し、解散と相成ったわけである。(3785字)

(追記)先日の日記にも記したことだが、東証西武鉄道株の廃止を決定した。これで堤義明が少なくとも鉄道とプロ野球の世界から消えてくれれば、言うことはない……が、「世紀の悪人」*16渡邊“ナベツネ”恒雄同様、こういった人物はしぶといので、注意が必要である。

それにしても、これによって西武鉄道の運行に支障が生じないを祈るだけである。最近首都圏のJR各線で整備不良が原因と思しき事故などが頻繁に発生しているが、これはどうやら労使関係が密接に関わってくるようだ。ともあれ、一番困るのは利用者である。膿を搾り出した後の対処が最も重要なのである。

asahi.com西武鉄道ジャスダック上場準備 東証は「廃止」決定 』*17
 西武鉄道による有価証券報告書などの虚偽記載問題で、東京証券取引所は16日、西武鉄道株の上場の廃止を決めた。通告を受けた西武鉄道の小柳皓正社長は同日夜、記者会見を開き、「8千人の一般株主の利益確保を最優先に、ジャスダック市場への上場準備を開始する」と発表した。04年度中の上場を目指すという。一方、金融庁は同日、有価証券報告書を提出している上場企業などに開示内容の点検を指示すると発表した。

 東証は、上場廃止基準のうち(1)虚偽記載を行い影響が重大(2)公益・投資者保護のために廃止が必要、の2点に該当すると判断した。西武株は11月17日から12月16日まで整理ポストに移されて取引が継続され、12月17日付で上場廃止となる。

 これまでの調査の結果、西武鉄道は少なくとも57年から、親会社コクドの保有株を個人名義と偽っていたことが判明。個人名の印鑑を会社で管理したり、株式担当を経験した複数の社員が幹部に昇進したりしていた事実もあり、東証鶴島琢夫社長は「西武鉄道での組織的取り組みがあったと推認される」と述べた。

 西武鉄道の小柳社長は上場廃止を受けて「外部からの指摘を受けるのではなく、自ら虚偽記載の問題を開示したが、結果として廃止に至ったことは残念」と述べた。また、「コクドが持つ当社株を新たな株主に取得してもらうには、株式の流動性確保が必要。できないと改革が挫折してしまう」と再上場の必要性を強調した。

 日本証券業協会が開設する店頭市場ジャスダック」は、中堅企業や新興企業が中心。12月13日に取引所に移行する予定だが、東証1部に比べると上場のハードルは低い。西武鉄道が審査を通過できる可能性は高いとみられる。

 伊藤金融相は16日、有価証券報告書を提出している上場企業など4575社に対し、1カ月以内に過去5年間の開示内容の点検を指示すると発表した。同時に、審査態勢の強化や情報開示制度の見直しを検討する。

 制度の見直しでは、金融審議会(首相の諮問機関)で、経営者に開示内容が適正であることの確認を義務づけ▽上場企業の開示義務違反に対する課徴金▽株式公開していない親会社の情報開示、など証券取引法の改正を含む改革案を検討し、年内に考え方をまとめる。

(以上、追記)

04年11月18日 一部訂正、追記

*1:小規模で、土日受付は行っていない。

*2:車庫があり、検査や出発を待つ車両を留置する。

*3:この他、成田駅東成田駅芝山千代田駅芝山鉄道に直通される列車も入線してくる。

*4:京成押上線の正式な区間は、青戸駅〜押上駅。ただし前述の通り車庫が京成高砂駅にあるので、ほぼ全ては京成高砂駅まで直通する。

*5:羽田空港と成田空港を直結することから、この名がついている。

*6:ただし、東京メトロと相互直通している各社で、時々イヴェントとして優等列車を運行し、遠隔地に速達することがある。私の多用する東京メトロ千代田線でも小田急車で千代田線内を優等運転し、千代田線・綾瀬駅小田急小田原線小田原駅まで運行したことがあった。普段千代田線は、同多摩線唐木田駅までしか行かない。

*7:鉄道ファンの中でも京急車は超個性的として有名であり、京急電鉄はとにかく全てが他社と一線を画している。例えば乗務員が車両のドアを閉める時も「ドア閉めまーす」と言うのだそうだ。他社は大概「閉まりまーす」であるのに。

*8:エアポート特快は、北総線へ直通されないので、北総車での運行はない。しかし将来的には北総線成田市方面に延伸される計画があるので、可能性がない訳ではない。

*9:もともと京成押上線と都営浅草線の接続駅だったが、15年3月から東武伊勢崎線東京メトロ半蔵門線の接続駅にもなり、いつの間にか4社路線を有する一大ジャンクション駅に。ってここ墨田区ですよ!

*10:このような例は都内だけでも数多くある。枚挙に暇がないので、紹介は割愛する。

*11:電気街には、秋葉原、岩本町の各駅のほか、以下の駅からも歩ける。東京メトロ銀座線・末広町、同千代田線・新御茶ノ水駅、同丸の内線・御茶ノ水駅、淡路町駅……となると、中央総武緩行線秋葉原駅の1つ手前の駅である御茶ノ水駅までも最寄駅ということになってしまう(笑)。このように、都内の1駅区間は1km程度なので平気で歩けるのである。

*12:都内に数店舗を抱える大型書店。

*13:椎応大学は、C央大学、つまり中央大学がモデルになっているらしい。というかそのまんま。アニメ版のエンドクレジットには取材協力として中央大学広報部が挙げられている。

*14:ただし同駅までは、多摩都市モノレール中央大学・明星大学駅高幡不動駅\200)を利用する。

*15:とは言ってみたものの、新宿駅までは京王線の特急で来るとしても、新宿駅からJR秋葉原駅までは20分\160で、岩本町までは25分\210であるので、JR利用の方が早くて安くて、実際的である。

*16:文藝春秋社『文藝春秋』04年12月号を参照のこと。因みに読売新聞社は社員に他誌への寄稿を禁じているのに、社長だけはなぜか超法規的である。うーむ、さすが「世紀の悪人」。

*17:http://www.asahi.com/special/041020/TKY200411160354.htmlより引用(09年2月12日現在、確認不可)。