半蔵門線論
東京近郊にお住まい以外の方々にはよくわからないことと存じますが、今回は渋谷−押上(東京都墨田区)間を走る東京メトロの地下鉄半蔵門線について書きます。こちらの路線図をご覧になると多少わかりやすいかと思います(アドビ社のAcrobat Readerが必要です)。しばしば私はこの路線については言及したことはありましたが、まとまったことを述べたことはありませんでした。
簡単に同線の特徴を述べますと、大手町駅を境として西側は東京メトロ銀座線の、東側は東京メトロ日比谷線のバイパス線とするために開業いたしました。また渋谷側で東急田園都市線と、押上側で東武伊勢崎線と直通するという形は、日比谷線が中目黒(東京都目黒区)で東急東横線と、北千住(東京都足立区)と東武伊勢崎線と直通しているのと同じように、東急−東京メトロ−東武という同じ3社による運行は半蔵門線の役割を特徴付けています。また都営地下鉄4路線を含めて殆どの路線は20前後の停車駅を持つ中で、半蔵門線は14駅しかないというのも、特徴でしょう。
私はここ数日、渋谷からの行き帰りや表参道からの帰りなどで半蔵門線に乗る機会が多くありました。これまでは路線の東側では利用したことはありましたが、渋谷に行くためには凄く便利な路線だと思いました。
しかし、押上方面の電車に乗る度思うのですが、乗客があまり多くありません。相変わらず北千住方面に向かう東京メトロ千代田線や日比谷線は混雑したままです。特に日比谷線は設備上の欠陥*1を抱えているので、同じ伊勢崎線に直通する半蔵門線は便利なはずなのです。しかし乗客が少ない。
それは、恐らく半蔵門線が大手町以遠は物凄く使い難いからではないかと思うのです。昼間時ダイヤで日比谷線が1時間に6本(2本に1本)が伊勢崎線に直通する*2のに比べて、半蔵門線は1時間に3本しか*3ありません。そして直通しない電車でも、日比谷線は同一駅(北千住駅)の、同一ホームで東武伊勢崎線の電車に乗り換えることができます。しかし半蔵門線から伊勢崎線に乗換えようとすると、押上から発車する伊勢崎線電車は半蔵門線から直通してくる車両だけであるので、即ち先に述べた通り1時間に3本しかありません。おまけに半蔵門線は、押上どころか途中駅である清澄白河止まりというダイヤが1時間に4本もあります。
どこを切っても不可解なところが出てくる東京の地下鉄政策ではありますが、半蔵門線東側の終点がどうして押上になってしまったのかも甚だ疑問です。東武伊勢崎線へのバイパス線としての役割を半蔵門線に当初から担わせたかったのであれば、東側は曳船(東京都墨田区)を終点にすべきだったと思うのです。東武鉄道は半蔵門線へ直通するために、曳船−押上の短い地下区間を新しく建設し、運行を担当しています。しかしこの区間も東京メトロが担当すれば、伊勢崎線への連絡は容易でした*4。
或いは、押上駅と東武業平橋駅を同一駅として乗り換え可能にすればよいのです。かつて京成押上線・都営浅草線の押上駅と、業平駅は乗り換えが可能でした。しかし半蔵門線が押上まで延伸し、同駅を東武鉄道も使用するようになると、押上駅と業平橋駅は同一駅ではなくなりました。これも千代田線同様の「乗り入れ迷惑」の1つかもしれません。これを従来通りにすれば、いくらか伊勢崎線への乗換え客にとって便利になるでしょう。
他にも例はあるのですが、やはり東京の鉄道各社は「会社本位」というか、利用者の利便を考慮していません。政治学者の原武史は『「民都」大阪対「帝都」東京』*5という本を著していますが、首都である東京の鉄道敷設が官や、官から下野していった者*6たちの主導で行われていった歴史が、そのまま体質に現れているのでしょう――さしずめ、「思想としての『帝都』鉄道」でしょうか*7。