京成金町線、線内折り返し路線に

またしても、自分の過去の発言を振り返るならば、2005年8月に京成金町線について述べていた。そこでは金町線の北上延伸について言及しているが、今から考えればお伽話のような妄想をしていたものである。

2009年夏までに大規模な複合施設が完成するなど、JR金町駅南口(京成金町駅東側)の再開発が進んでいる。タイミングとしては、この再開発に合わせて、京成金町駅を地下化するなどして延伸し、ホームの6両化などといった改良は可能だったであろう(地上駅のままのホーム拡張は、地元商店と住民が反対している)。地図を見る限り、常磐線を越えて東金町水元方面へ金町線が延伸するためには民有地を通過しなければならず、地形的にはおよそ不可能である。莫大な資金を投入すれば可能であったかもしれないが、京成電鉄にせよ地元自治体にせよ、それをやる余力はないだろうし、そもそも水元方面に延伸の需要があるのかどうか疑問である。

京成電鉄に関して言えば、成田空港線(愛称・成田スカイアクセス)の建設、整備に注力したかったのが唯一の本音であり、金町線の整備など念頭にもなかったというのが真実だろう。金町線が完全な線内折り返し路線になったのも、成田空港線の開業の影響が一番大きい。今までは金町線は高砂で本線とホームを共用していたので、本線の運行に関してネックとなっていたが、同駅に金町線専用ホームが設けられ、本線とは線路を切り離されたので、余裕ができる線路容量分が空港線の運行に充てられるのであろう。

JRと東京メトロ(地下鉄)を除けば、京成線はわたしが最もよく使う路線である。東京都西部を走る私鉄各線にはほとんど乗ったことがない一方で、京成線は、本線(上野−高砂−成田空港)、押上線(押上−高砂)、金町線(金町−高砂)を完乗している。京成線で乗ったことがないのは、東成田線千葉線千原線といった千葉県内の支線だけである。それゆえに京成線、とりわけ金町線には思い入れはあると自負していたのだが、路線改良に伴うダイヤ改正は完全に見過ごしており、そのことを知ったのは6月30日、ダイヤ改正まであと1週間を切っていた。金町線の折り返し路線化よりも、むしろわたしがそれに気づかなかったことに、わたし自身が驚かされている。

以下に、2004(平成16)年10月30日改正時点での旧ダイヤと、2010(平成22)年7月5日改正の最新ダイヤの金町駅時刻表を用意した。旧ダイヤの時刻表は長らくわたしが手元に所有していたものをスキャナで読み込んでいるので、多少汚くなってしまっているが、ご諒解願いたい(クリックすると、拡大可能)。


▲新旧ダイヤの金町駅平日時刻表


▲新旧ダイヤの金町駅休日時刻表

京成電鉄が公開している資料(pdf)によれば、金町線のダイヤは平日上下各80本が89本、休日上下各65本が75本に増え、その代わりに金町−高砂間の終日折返し運転となった。旧ダイヤでは朝夕を中心に金町から上野(一部押上)まで金町線電車が直通していたのだが、新ダイヤでは利用者は高砂で必ず乗り換えをしなければならなくなった。ところが新ダイヤでは、平日休日ともに列車の増発がなされ、とりわけ昼間時(10−16時)は20分ヘッドの1時間に3本から、15分ヘッドの1時間に4本へと増えたため、不便になったという印象は全く感じられない(本線または北総線への乗り換えには多少不便になったかもしれないが)。

そもそも、金町から上野または押上へと直通するダイヤが必要だったのかは、疑問であった。旧ダイヤでは押上行は早朝と夜中の2本しかなく、度重なるダイヤ改正の名残であることを窺わせるが、いずれにしても実用的な運用ではない。上野から柴又あるいは金町に行きたい人には、上野発金町行の電車は便利だったかもしれない。わたし自身は上野から金町行に乗ったことはある。しかし、各駅停車(普通)である。それだったら、上野から快速なり特急なりの速達列車に乗り、高砂で乗り換えたほうが、結果的に柴又や金町には早く着く。本線の速達列車はいずれも上野、日暮里を出ると、高砂の手前の駅である青砥までノンストップだからである。

また、上掲の資料にも書かれているが、旧ダイヤにおいては朝夕の普通電車は金町線直通の4両編成電車を中心に運行されていた。ところが、金町線電車が本線に乗り入れなくなることによって、本線の普通電車は、6両または8両の電車を充当することができるようになって乗員が増え、結果として混雑が緩和されるようになるかもしれない。

一般的に言って、都心直通の列車がなくなると利用者からの反発があるものだが、今回の金町線の大幅なダイヤ改正は、見返りに本数が増えることもあって、特に批判の声が聞こえてくるわけでもない。だが逆に言えば、金町線が元々その程度の立ち位置でしかなかったことを改めて確認することにもなるわけで、別にわたしは金町線のファンというわけでもないが、沿線に住んでいる人間としては、ちょっと物悲しい気持ちがないわけでもない。

おまけに、わたしが撮影した金町線電車の珍しいカラーリングをご覧に入れよう。いずれも京成電鉄開業100周年を記念して塗り戻された、往年の車体色だそうだ。撮影はいずれも金町駅においてなされたものであるが、わたしが同駅をたまたま通りがかったときに停車していた電車を携帯電話のカメラで激写したものなので、できのよい撮影ではないが、ご愛嬌。

3300系3312編成

3300系3324編成