私は首都圏鉄道路線オタク

11月10日(水)14時41分頃、東京都足立区のJR常磐緩行線(各駅停車)・東京メトロ(旧・営団地下鉄)千代田線の綾瀬駅で人身事故があった。常磐緩行線は千代田線にほぼ全車両が直通運転するため、両路線の境界駅である綾瀬駅で事故が生じた結果、常磐緩行線は上下線とも運転見合わせの状態がしばらく続いた。

これに困ったのは、普段千代田線を通学に利用している私である。千代田区大手町駅で乗り換える東西線は、同線に直通運転するJR中央緩行線中央・総武線)が本当にしょっちゅう人身事故などのトラブルを起こし、その影響で東西線も停まるのであるが、千代田線の人身事故は、1年半ほぼ毎日利用しているが、初めてではなかろうか。それはさておき、とにかく大学に行くためにはどこかから東西線に乗らねばならない。

JR常磐緩行線金町駅で、駅員で配っていた振替乗車券を受け取る。首都圏の各鉄道会社(事業者)は何らかの事由で自社路線の運行が滞るか停まってしまう場合、各駅で乗り換えられる他社路線に振替乗車を行うのである。東京都心はJR、地下鉄2事業者、私鉄各社が複雑に入り組み、また相互直通運転を行っているため、別ルートで目的地に着くことは可能なのである。

ここで私は、3つの代替ルートを設定する。尚、JR金町駅京成金町駅は徒歩30秒である。東京都北東部在住ではない人にはわかりにくくて申し訳ない。

  1. (JR金町駅南口発)都営バス・浅草寿町行 ⇒ バス停・浅草寿町 ⇒(徒歩)⇒ 【東京メトロ東武・浅草駅】東京メトロ銀座線・渋谷行 ⇒ 【東京メトロ都営地下鉄日本橋駅】同東西線・中野/三鷹
  2. 京成金町駅発)京成金町線高砂行 ⇒ 【京成・高砂駅京成押上線都営地下鉄浅草線京急線直通)・西馬込京急線方面行 ⇒ 【同/同・日本橋駅】同東西線・中野/三鷹
  3. 京成金町駅発)京成金町線高砂行 ⇒ 【同・高砂駅京成本線京成上野行 ⇒ 【JR/京成・日暮里駅】 ⇒ JR山手線・池袋/新宿方面 ⇒【JR/東京メトロ/西武・高田馬場駅】同東西線西船橋東葉勝田台

(参考路線図はhttp://www.chiri.com/download/routemap/23_rosenzu_01.PDF(要Acrobat Reader)*1。但し、この路線図は営団地下鉄の民営化以前のものなので、注意してほしい。銀座、丸ノ内、日比谷、東西、千代田、有楽町、半蔵門、南北の営団各路線は、全て東京メトロに移行している)

しかしバスだと、道路状況により尚更時間がかかってしまう懸念があり(上記路線は、水戸街道国道6号線》を上るので混雑に巻き込まれがちである)、それ以前にバス会社は鉄道会社の振替乗車を受け付けない可能性があるので、1は没。従って2か3になるのだが、それは取り敢えず高砂駅に着いてから決めようと思った。ここまでの思考時間、10秒弱。我ながら路線オタっぷりを自覚してしまった。そして我ながら、便利だなあと思った。

因みに水曜日の授業は4限(14:40〜16:20)のみという、楽なような面倒なような日である(その4限も必修の自動登録なので、それさえなければ休日であったのに)。しかし前日就寝は29:00(当日5:00とも言う)だった私の起床時間は14:00。大学が新宿区で家から遠い私は、間に合わない。自主休講(サボりとも言う)決定。しかし学部事務所に重要書類を提出しなければならない私は、重い腰を持ち上げて出かけなければならなかった。その矢先の、別ルート登校にテンションは上がる。

23区内の路線では恐らく唯一であろう単線*2路線(京成金町駅柴又駅)を有する京成金町線を利用して、高砂駅に到着する。思えば、京成金町線を利用するのも、2、3回目である。京成線のみでは日暮里や上野に出るのが関の山だし、時間がかかるので、「万里の長城」山手線*3の中に入り込む地下鉄千代田線に直通する常磐緩行線を利用するのが常であった。不謹慎な言い方だが、鉄オタ的には振替乗車様々である。

さて、高砂駅で乗り換えるにあたり、都営浅草線経由か、京成本線経由かで迷う。大いに迷う。因みに前者は1度だけ理由したことがあるが、後者は未体験路線である。高砂駅からの発車は両路線とも同一番線からである。

基本的に私は地下鉄が好きなので、9分9厘都営浅草線経由で行こうと思っていた。このルートの方が恐らく早いと思われたし、事実「Yahoo!路線情報」で確認したら、前者46分、後者51分だった。だが未体験である京成本線の誘惑にも抗しきれずにいた。

その時、15:32高砂駅発、京成本線・普通上野行が私の立つホームに到着する。「普通上野行」の車両電光掲示幕。私はこの6両編成車に乗った。東急車輛製と思しき車両。超楽しい。実はこの日、風邪なのかウイルス性の腸炎なのか、とにかく腹を下していた(『大学受験生応援コラム?』で後述しよう)のだが、電車に乗っている間だけはすっかりそのことを失念してしまっていた。

高砂駅から先は葛飾・足立・荒川という下町の3区を京成本線は通過していく。都心に近づくにつれて高架化されてもいたが、葛飾・足立区内はまだ地上路線であり、民家などの低層住宅の隙間を縫っていった。こういう車窓の風景は、地下鉄では絶対に得られないものである。地上路線の車窓を物珍しげに眺めている男がいたら、それは私かもしれない。

千住大橋駅では、優等列車の通過待ちがあるという。しかし高砂駅では、私の乗っている電車が「終点の京成上野駅まで、一番早い電車です」というアナウンスがあったはずだ。何が来るのかと思って待っていると、スカイライナーである。千葉県は成田空港、空港第2ビル、成田の各駅から先は日暮里駅、京成上野駅までノンストップで約60分で結び、その姿からは「京成新幹線」とも呼ばれる有料特急である。しかも上りのスカイライナーが去った直後に、偶然にも下り線路に、成田空港行のスカイライナーが通過していった。爽快である。いいもの見させてもらったという感じである。

本当は、日本発の地下駅である京成上野駅まで行きたかったのだが、一応大学に行くことを最優先させるために、断腸の思いで断念。手前の日暮里駅で下車。しかし時刻を確認すると、16:10。17:00で閉まる学部事務所に間に合わない可能性が大きい。仕方がないので、事情を説明するために学部事務所に電話をした。本来の通学路線が止まってしまっている事情を一応は理解してくれた模様。「お役所」と言えどコンピューターではなかったようだ。書類は明日まで待ってもらえることになった。

しかしここまで引き返す訳にも行かず、サークルの友人に渡すものもあるので、取り敢えず引き続き大学には行こうと決めた。

日暮里駅からは山手線・池袋/新宿方面行に乗り換える。山手線なんてのはしょっちゅう乗っているので、正直私にとっては真新しさはない。池袋で山程人が降りて、山程人が乗ってくることには鬱である。高田馬場駅の山手線ホームでは発車時に「タン・タン・タン・タータ・ターン〜♪」と『鉄腕アトム』のテーマソングが流れる*4が、これも聞きなれたものである。同駅で東西線に乗り換え、大学の最寄駅に向かう。

やっとの思いで大学に辿り着き、部室に行った。普段は乗り換え1回で着くのだが、今回は3回と、やはり疲れもした。時間も普段の1.5倍程度はかかってしまっている。20:30頃帰宅の途に就いたが、その時は既に千代田線が復旧していた。スムーズに帰れることに喜びもあったが、綾瀬駅を通過する時、ここでマグロ*5拾いがあったのかもしれないと思うと、気味が悪くもなった(但しこの事故で、人が死んだかどうかは私には不明である)。

尚全くの余談だが、東証西武鉄道株の上場を廃止する方針を固めたそうだ。おめでたいことである。客観的に見ても、実に妥当性のある対処である。私は堤義明ナベツネ同様悪人だと思うし、故に大嫌いだし、故に西武ライオンズ読売ジャイアンツ同様嫌いである。

私鉄各社は、西武・堤一族然り、東武・根津一族然り、東急・五島一族然り、小田急利光一族然り枚挙に暇がないが、一族経営をやめるべきである。乗客輸送という公的性質を強く帯びた業務を任される会社が、一部の人間に「私物化」されていいはずがない。西武はその最たる例である。東急電鉄創始者・五島“強盗”慶太*6は地下鉄すら乗っ取ろうとしたが、東急に乗っ取られなくて本当よかったと思う。早川徳次*7の霊が浮かばれなかったところだ。(3810字)

asahi.com西武鉄道株、上場廃止へ 虚偽記載で東証が方針固める」 *8

 東京証券取引所西武鉄道株の上場を廃止する方針を固めた。有価証券報告書保有株比率を40年以上偽って記載、東証の調査への対応も積極的でないことから、東証経営陣が、公益や投資者保護の観点で上場継続は適当でないとの考えで一致した。西武鉄道株は決定の手続きが済み次第、整理ポストに移され、数カ月後に廃止となる。破綻(はたん)状態に陥っていない企業が上場を廃止されるのは極めて異例。
 東証有価証券報告書への虚偽記載が相次いで発覚したことで揺らいだ市場の信頼を取り戻すため、厳正に対処することにした。12日は、午前の取引から西武鉄道株の売買を一時、停止した。
 東証の調べでは、西武鉄道は約40年にわたりグループの中核企業であるコクドやプリンスホテル保有する株の一部を、グループ企業のOBら個人が所有しているように偽装。有価証券報告書で、コクドなどによる保有株比率を実際より過少に記載した。
 この操作で「大株主上位10人と役員、自己株式を持つ場合は自社も含めた保有株比率が80%を超えたまま1年を経過すると廃止」との上場廃止基準に触れず、上場が維持できた。
 この基準抵触については、コクドなどが8、9月に、西武鉄道株を大量に売却したことで9月末までに解消された。しかし、虚偽記載が長期に続けられていたこと、および西武鉄道側が東証の調査に対し積極的に説明する姿勢に乏しいことから、「公益または投資者保護のため、取引所が上場廃止を適当と認めた場合は上場廃止する」との包括的な規定を使い、廃止にすることにした。
      ◇
 西武鉄道は12日午前、「当社では東京証券取引所より、現在、そうした内容について決定した事実はなく、引き続き上場廃止基準に該当するか否かの審査を行っているところである旨の連絡を受けている」とのコメントを発表した。 (11/12 11:10)

*1:09年2月12日現在、確認不可。

*2:上下線で1本の同じ線路を使用すること。よってダイヤ増発が難しい。他に、複線、複々線など。

*3:鉄道オタク達の隠語とでも思って頂きたい。

*4:鉄腕アトム』発表時、手塚治虫高田馬場に事務所を構えていたとか。

*5:鉄道の人身事故で飛び散った死体の肉片。鉄道会社の隠語である。

*6:戦前に存在した地下鉄会社の1つ「東京高速鉄道」の創始者でもある。鉄道会社を数多く乗っ取っていったことから、駄洒落で皮肉られて「乗っ取り王・強盗(=五島)慶太」と渾名された。現在東急が保有する路線が他社と比較して異常に多いのは、彼の豪腕に因るところである。

*7:戦前存在したもう1つの地下鉄会社「東京地下鉄道」の創始者。「地下鉄の父」と呼ばれる。堤義明と違って、早稲田大学出身の人物で好感が持てる数少ない1人。

*8:http://www.asahi.com/business/update/1112/072.htmlより引用(09年2月12日現在、確認不可)。