はじまりはいつも雨

毎日新聞『JR中央線・変電施設火災:朝の足、直撃 「復旧いつ」詰め寄る乗客』

変電施設の火災が朝の通勤ラッシュを直撃した。沿線の駅は足止めされた乗客でごった返し、ホームに人があふれた。「いつ復旧するんだ」。都心に向かえない乗客たちは駅員に詰め寄り、駅周辺ではバスやタクシーを待つ人たちの長い列ができた。【内橋寿明、山本太一】

火災現場に近い国分寺駅(東京都国分寺市)周辺には何かが焦げたようなにおいが立ちこめ、駅前のロータリーに消防車やパトカー十数台が並んだ。ホームや改札周辺の時計は午前6時25分を指したまま止まっており、長時間にわたって送電トラブルが続いていたことを物語っていた。

駅構内では、代替輸送の券を配る駅員に乗客が殺到。振り替え輸送でバスに乗ろうとする人の列が200メートル以上続き「まだ復旧しないのか」と駅員に詰めよる人もいた。

中野区に住む大学講師の女性(26)は「9時から授業だったのに大遅刻。バスに乗れと言われたが、全然来ない」とうんざりした様子。

男性会社員(28)は「タクシーを待っていたが来ないので(約6キロ離れた)立川まで歩いて行きます」とあきらめ顔で話した。立川駅立川市)の上りホームでは、2時間近く停車したままの列車の乗客が、疲れ切った様子で携帯電話の画面を見つめたりしていた。振り替え輸送券をもらう列に並んでいた国立市の会社員、佐藤則子さん(64)は、南武線西国立駅から立川駅で中央線に乗り換え原宿まで行く予定だった。

「午前中に仕事で大きな取引があったが3時間遅れそう」といい「西国立駅でアナウンスがなかった」と憤っていた。
◇大学休講相次ぐ

JR中央線の変電施設火災の影響で、亜細亜大(東京都武蔵野市)と国際基督教大三鷹市)が10日、全学休講にした。一橋大(国立市)は一部を休講。東京学芸大(小金井市)では、新入生向けの指導教員面接に間に合わない学生が相次いだ。

亜細亜大はこの日が始業日で、学生から「授業に間に合わない」などの連絡が殺到したことから午前10時過ぎに決定した。補講などで対応するという。

毎日新聞 2008年4月10日 東京夕刊*1

約3ヶ月ぶりの投稿は何を題材にしようかと迷ったが、時事的な話題がちょうど見つかったので、これにした。

縷々述べてきたことだが、私は昨年(07年)4月から中央快速線を日常の足として利用するようになった。ところがこの路線は、確かに最近は人身事故による遅れや運休は少なくなってきたと思うが、それでも乗客混雑による遅れは日常茶飯事だし、電気系統などのシステムトラブルで動かなくなる頻度が高い気がする。特にこの日は雨降りだったから、運休に巻き込まれた人たちは気の毒だったことである。

鉄道やバスなどの公共交通機関を単なる移動手段として気にも留めていない人たちにとっては、これらの遅れや運休は腹立たしい事態であろうが、私にはタダで回り道して未乗路線に乗れる楽しみができるのである。

さて、多摩地方の鉄道網は都心から放射線状に延びているだけであり、そこを南北に走る路線(フィーダー線)は少ない。京王井の頭線、東急世田谷線路面電車)、JR武蔵野線南武線横浜線がそれに当たるだろうが、運転間隔が広かったり、一本あたりの車輌数が少なかったりと、便利とは言えない。また都心とは異なり、そこに家や仕事場があったとしても、異なる路線の複数の駅を利用できるというケースは稀であるか、可能だとしても20〜30分は歩かなければならないなど現実的ではなかったりする。

私は拙宅最寄であるJR常磐緩行線某駅から、大学の最寄駅である中央線某駅(だいぶ立川寄り)へと行かなければならない。私の目的地は南武線の駅からも比較的近いので、どこかでそれに乗り換えることは思いついた。そのために、新松戸から武蔵野線に乗るとか、新宿から京王線に乗るとか色々考えたが、乗換回数が多く煩雑である。

そこで私は、常磐緩行線・地下鉄千代田線、小田急線直通の「多摩急行唐木田行き」に乗ったのである。小田急線の登戸駅からは南武線に乗り換えられる。千代田線と小田急線の接続駅である代々木上原から登戸までは、下北沢、経堂、成城学園前にしか停まらない。こういうときだけよく頭が回るものだと、我ながら感心してしまう。

先日の中央線トラブル時*2には、初めて小田急線を下北沢−代々木上原間だけではあったが乗ったが、今度は代々木上原から登戸までの乗車である。知らない区間を乗るのはとても胸が躍る。外気との気温差のせいか窓は曇っていて景色はよく見えなかったが、乗客を観察するだけでも面白い。中央線の新宿以西と客層が似ているのは、両路線とも同様に沿線が(割と高級な)住宅街になっているからだろう。また、優等列車なのに経堂辺りまではあまり速度が出ていなかったことも、興味深い。複々線化工事が遅れているためであろう。

南武線は全くの初乗車である。小さく、あるいは粗末な駅が多いという印象である。ホームの両端まで屋根が延びておらず、この日は雨だったので、先頭もしくは最後尾の車輌に乗っていた人は雨に濡れてしまっていた――かく言う私もその一人である。

私の目的地へは谷保駅からも20分ほど歩けば辿り着けるのだが、雨降りだし、振替乗車券でバスにもタダで乗れるので、矢川駅前始発の立川バス国立駅行きに乗った。ちなみに、上の引用記事では一部休講にした大学もあるというが、私の授業は休みにならなかった。私は10分ほど遅刻して行った。

このとき同じバスに乗り合わせ、同じ停留所で降りた小学生くらいの幼女が、私を散々不信な目で見ていたのがとても気になった――というか、かなり不愉快であった。マスクをしていた私の目つきが怪しかったのかどうかは定かではないが、私のような人畜無害の大学院生にまで用心せよ、警戒せよと子どもたちに教え込む小学校の教師たちの徹底振りもいかがなものか。まあ、大学生ほどいい加減で信用できない人種はないと私も確信しているので、彼らの警戒心、男子大学生に対する不信感は全く適当であるかも。