進学校野球部員にドラフト指名

『びっくりドラフト 楽天1巡目の札南・寺田指名 「本当?」校内大騒ぎ』北海道新聞

道内の高校球児が相次いで夢のプロへの扉を開き、北海道日本ハムファイターズは高校球界屈指の強打者中田翔選手(18)=大阪桐蔭=の交渉権を獲得した。三日、東京で行われたプロ野球高校生ドラフト東北楽天に指名された札幌南の寺田龍平投手(18)はまさかの一巡目指名を「びっくりです」と素直に喜んだ。旭川からも二人の選手が指名され、一人は中田選手と日本ハムでの活躍を誓う。来季以降のプロ野球がますます楽しみになってきた。

「良くて三、四巡目と思っていた」。午後三時十五分、札幌南の校長室にジャージー姿で現れた寺田投手は、驚きと喜びの入り交じった表情を見せた。

一巡目指名は球技大会でバドミントンの応援の真っ最中に聞いた。「級友におめでとうと言われ、最初は何のことか分からなかった」

札幌南は道内屈指の進学校。当初から指名の可能性はあったが、ドラフトが始まった時、集まった報道陣は三人。校内は「本当?」と大騒ぎになった。

報道陣も次第に増え、会見時には約三十人に。寺田投手は「大変光栄です。勝利に貢献できる選手になりたい」とプロへの意欲をみなぎらせた。

寺田投手は恵庭・恵北中時代、学業成績はトップクラスで、硬式野球チームでも活躍する「文武両道」。札幌南で甲子園に行くのが夢で、あえて学区外の同校を選んだ。

「プロ入り」という、さらに大きな夢が加わったのは昨秋。秋季大会で球速百四十キロを初めて記録した。一年生のころは百三十キロ程度。急激に“進化”を遂げ、プロで通用する自信が芽生えた。

ただ、チームメートの多くは大学へ進む。寺田投手も慶応大を志望校に考えていた。父の自営業、智学(ちがく)さん(49)は「大学に入ってからでも遅くないと言ったことはありますが、今はうれしい」と喜ぶ。

楽天が道内の高校選手を一巡目指名したのは昨年の田中将大投手に続き二人目。寺田投手は「目標は感情をあらわに投げる田中投手。同じチームでやれるのはうれしい」と言い切った。*1

北海道札幌南高校といえば、道下一番の進学校である。07年(06年度卒業生)実績で北海道大学に68人、東京大学に3人現役合格者を輩出している。そんな高校からプロ野球選手が誕生しようとしている。同校野球部の寺田龍平投手にドラフト会議でプロ野球チームから一巡目で指名がかかった。同校は全国高校野球選手権大会夏の甲子園)につながる南北海道大会ではベスト4に入っている。

同校は進学実績を見ると北大進学数こそずば抜けているが、あとは大体我が母校の安積高校と同じ程度である――卒業生のひいき目でなければ。選手それぞれの個々の素質にもよるが、県大会ベスト4という成績でプロからお呼びがかかるならば、00年から01年ごろの安積高校野球部、すなわち01年春のセンバツに「21世紀枠」から出場したあのチームにからだって、プロ野球選手が出てもおかしくなかったわけである。

球速140キロであれば、私の同期の三條能久君*2や一学年上の松山宗太郎さんだって、そのくらい出していたはずである。

ともあれ寺田投手は、進学校運動部員の希望の星である。彼が本当に“文武両道”を実践していたかどうかはわからない――というのは、彼は慶大志望だが、野球部での実績を掲げたAO入試を検討していたように推察されるから――が、一方でハードな進学校での学業と、他方でやはりハードな進学校の部活動のはざまで四苦八苦する進学校の生徒たちの励みになる。