菅新内閣に関する覚え書き

●「貴族しか総理大臣になれない。その点市長は市民から直接選ばれる。」名古屋市長選挙に出馬する際、当時衆院議員だった河村たかし氏がこのような旨を語ったのを、わたしは印象深く記憶している。だが国会議員の家系出身ではない*1という意味で「貴族」ではない菅直人氏が首相に就任したいま、河村氏は何を思うであろうか。

●菅新内閣には、珍しく「高卒」で入閣した議員がいる。誰か。仙谷官房長官である。とはいっても、高卒の叩き上げ議員どころか、むしろその真逆である。彼は東大法学部在学中に司法試験に合格してしまったので、大学を卒業する必要がなくなってしまったのであろう。その意味で仙谷氏は東大中退の「高卒」だが、むしろ超エリートである。ついでに言えば、大学を出ていない国務大臣経験者といえば、わたしは田中角栄くらいしか思いつかない(田中は大学に入ってもいない)。

産経新聞によれば*2菅内閣の閣僚を出身大学ごとに分けると、東大が6人5人で最も多く(原口総務相、小沢環境相=埼玉大院修了、岡田外務相、仙石官房長官=中退、亀井金融・郵政相、荒井国家戦略相)、次いで早大の3人(北沢防衛相、野田財務相、山田農林水産相)、京大の2人(前原国交相、川端文科相=京大院修了)、慶大の2人(中井国家公安委員長長妻厚労相)と続く。東工大菅首相)、中大(千葉法務相)、上智大(玄葉公務員制度相)、神戸大(直嶋経産相)、青山学院大蓮舫行政刷新相)は1人。(10年6月14日追記)亀井氏の辞任により、東大出身の閣僚は5人となったが、最も多いことに変わりはない。後任の自見庄三郎氏は九州大医学部卒で、医師でもある。

民主党の新役員のうち、重役の出身大学を見てみると、東北大(枝野幹事長)、大阪大(樽床国対委員長)、京大(細野幹事長代理)と、早大(安住国対委員長)と、上に挙げた党政調会長も兼務する玄葉氏を含めても、国立大学、しかも地方の国立大出身者が意外に多い。

●同じく上掲の産経新聞によれば、菅内閣衆院出身閣僚の当選回数別に見ると、当選6回(前原、小沢、仙石、玄葉の各氏)と5回(原口、野田、荒井、山田の各氏)がそれぞれ4人で一番多い。また枝野氏は6回、樽床氏は5回、細野氏は4回である。

●落選経験も考慮されなければならないが、当選6回という回数がメルクマールである。1993年の第40回衆院選から連続当選してきていると当選6回になるが、93年に初立候補したのは、前原氏、原口氏(落選)小沢氏、野田氏(96年落選)、荒井氏(96年落選)、玄葉氏、枝野氏である。山田氏は苦労人で79年から国政に挑戦しているが、初当選は93年だ。樽床氏は90年初立候補だが、93年初当選(05年落選)である。そして93年の前回選挙にあたる90年の第39回衆院選で初当選したのが、岡田氏と仙谷氏(93年落選)だ。

以下、続く。

*1:ウィキペディアによれば、菅氏の一族の中には、地方議会の議員を務めた者はいるようだ。

*2:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100609/plc1006090021007-n1.htm(10年6月10日)