『BURRN!』はすでに燃え尽きた

ハードロック・ヘヴィメタル専門月刊誌『BURRN!』の発売日は毎月第1土曜日なので、一昨日5日(土)に書店へ向かった。「熱狂的」、という言葉を通り越えて、もはや度を越した「狂信的」なRAINBOW信者である広瀬和生氏が編集長を務める同誌なら、先日亡くなったロニー・ジェイムス・ディオ(RAINBOWの初代ヴォーカリスト)に関して、何らかの追悼記事が掲載されるのではないかと確信したからだ。それ以上に「個人的にも親しくしていたという*1という広瀬氏がロニーの病気と死去について何らかの記事とコメントを発表することは、日本のみならず世界のメタルファン、少なくともRAINBOWとDIOファンにとっては決して小さくはない意義のあることであると思われたからだった。

ところが書店で同誌の表紙を見て、正直、驚いた。『BURRN!』2010年7月号は、元GUNS 'N ROSESのスラッシュが表紙を飾り、巻頭記事も彼のインタビューだった。まあ、ロニーが亡くなったが5月16日で、雑誌の発売が6月5日であることを考えると、表紙や巻頭記事の差し替えができなかったことにたいし、同誌の専門誌としての力量と熱意を疑わざるをえないことは確かだが、しかし記事差し替えが不可能だったということに納得できないことでもない。

しかし表紙や巻頭記事は無理だったとしても、せめて白黒ページでもいいから、前述のRAINBOW信者、広瀬編集長に彼ならではのロニーに関する記事を書いてほしい。その思いでページを繰ると雑誌中程に「訃報」と題されたカラーページがあり、ページいっぱいに引き伸ばされたメロイックサインを構えるロニーの写真と、その写真の下半分にかぶせた半ページほどの簡素な記事しか書かれていなかった。

そんなバカな。狂信的なRAINBOW信者であったがゆえに一部の同業者やメタルファンから相当評判の悪い広瀬氏だが*2、彼がRAINBOWへの信仰心を発揮するのは、ここをおいて他にあるというのだろうか。

そう思って更に記事を探すと、白黒のページの最後のほうに、ロニーの訃報にたいするロック/メタルミュージシャンたちが自身のウェブサイトなどにそれぞれの言語(主として英語)で発表した追悼コメントを翻訳して並べた記事が掲載されていた。これにはもはや呆れた。英語ができないとか、インターネット環境が周囲にない人ならともかく、この程度の情報は少なくとも訃報から数日のうちにはわたしは手に入れていたし、仮に英語ができない人でもネット上の有志が先を争ってこれらのコメントを翻訳してくれているので、それを読めば事足りる。ということは、『BURRN!』の役割はネット上の有志がヴォランティアでやったことと同じなのだろうか。

それ以上に、良くも悪くも日本におけるRAINBOWファンの第一人者としての広瀬氏が、ロニーの訃報に接して自らの雑誌での対応が遅れたことは、自らのRAINBOWファンとしてはおろかメタルファン、メタル評論家としての権威を大きく損なったであろう。落語に関する近著がある彼は、今やメタルよりも落語のほうに興味があるのではないか。

正直わたしは、同誌にも、それ以上に広瀬氏に失望した。そういうわけでわたしは同誌を買わなかった。「批判は買ってから言え」という意見はもっともだが、わたしがこの批判文を書いたのは、わたしが同誌に使う小銭を惜しんだことを表明したかったからである。「買わない」ということが最大の批判である。

*1:http://www.j-cast.com/2010/05/17066678.html?p=2(10年6月7日)強調は引用者。

*2:音楽プロデューサーの久武頼正が、名指しこそしていないが、明らかに広瀬のことを揶揄している。http://blog.livedoor.jp/vincent_devil/archives/50568178.html(10年6月7日)

久武:音楽じゃないところでうるさいですからね、それ以外の所で。/「お前はレインボーのアルバムを全部持ってるのか」/「持ってません」/「だめだ!聴く資格なし!お前は人間じゃない!ブタだ!!」って烙印を押されるみたいな(笑)。/〔中略〕/久武:「あなたはメタルを語る資格はありません」ってなる。/「はいはいさよなら」(笑)。病んでますよね。