Strings to the metal live! GAMMA RAY and RAGE live report: はじめに

振り返ってみると、わたしがヘヴィメタルのライヴを観に行くのは、08年7月6日のRAGEライヴ以来何と1年9か月振りだという。昨年3月末にDRAGONFORCEが来日したときに参戦を思い留まったのは、単に今後経済的に苦しくなることが予想されたからにすぎず、本職は広告代理店社員の「METALGATE」さんが、昨年9月12日のSTRATOVARIUSの川崎公演はチケットの売れ行きが悪く、当日券が手に入るはずだという情報をブログに書いていたときも、今こそ勉強に専念すべきだと自らを律して断念したという程度の理由からであった。
それにしても、1年9か月もの間一度もライヴに出かけていなかったというのは、やはり正直驚きなのである。カネがないだとか、専念すべき事由があるだとかといった事情は、驚きの理由としては副次的な要素に留まっている。お気に入りのバンドが日本にやって来ていなかったという単純な理由が、わたしをライヴ会場から遠ざけていたという事実は指摘されうるだろうが、それだってわたし自身を驚かせるには至らない。わたしにとって何が驚きなのかといえば、わたしにとって人生で最も不愉快な時期であった最近2年間にこそ、生でライヴを観ていなかったという事実に関してである。それゆえわたしにとって幸運だったのは、人生で最も不愉快な時期が継続している自今にあって、しかしながらライヴ断ちの期間はゼロにリセットすることができたことに尽きる。わたしにとってヘヴィメタルは、それをもってしてもわたしの不愉快さを慰めることは全く不可能であるけれども、しかしたとえ一時だけでもそれを忘れさせてくれる殆ど唯一のものである。

わたしを1年9か月振りにヘヴィメタルの戦場へと誘ったのは、わたしが単独公演を観たことのあるたった4つのバンドのうちの2バンドだった。GAMMA RAYとRAGEである(残りは、05年5月のJUDAS PRIESTと、08年2月のHELLOWEEN)。GAMMA RAYHELLOWEENとのカップリング・ライヴを含めて過去2回観ており、RAGEについては先に述べたショウで初めて観た。この2バンドはわたしの最もフェイヴァリットなバンドのうちの2つであることは言うに及ばず、CDもGAMMA RAYは漏らさず全て、RAGEも初期、中期のいくつかを除いて全て所有しており、少なくともヴィクター・スモールスキ[G.] がRAGEに加入した2001年以降のCDは全て持っている。そして今回、GAMMA RAYがRAGEを前座にして(興行側は「スペシャルゲスト」と言っているが)ライヴを行うというのである。もちろん、芸歴25年を越えるRAGEは日本でも主役として客が呼べるヴェテランバンドである。同様に芸歴25余年を数えるカイ・ハンゼン [Vo. & G.]率いるGAMMA RAYでなければ、RAGEをオープニングアクトに起用することはできないであろう(だから「スペシャルゲスト」なのだ)。ともあれ、ドイツ産のこの老舗2バンドが、たった8000円(ドリンク券500円を含む)で一度に観られる機会を逃す手は全くない。今のわたしにはカネはなく、時間の余裕も精神の安寧も全くありはしないが、それでもなお、否それだからこそ、ヘヴィメタルを渇望する魂が唸り声を上げるのだ。

今回のライヴレポートは、24000字を越える、この「日々徒然」史上1つのエントリーとしては最大規模の字数に至った長文である。