バカバカしいアメリカさんの映画

普段は全く観ないのだが、今日は何となくテレビ朝日の「日曜洋画劇場」を観てしまった。放映されていたのは「トリプルXネクストレベル」(2005年米)だった。この映画はシリーズ2作目だが、なんと日本では劇場未公開らしい*1

前作で活躍していたシークレット・エージェント“トリプルX”が亡くなり、国家安全保障局のギボンヌは、かつて自分の部下でもあり、現在は刑務所にいるストーンを新しくエージェントとして起用。やがてストーンは国家転覆を狙う国防長官デッカートと対決していくことに……。

ヴィン・ディーゼルが続編を降板したことから、急遽アイス・キューブに主演を変えて作りあげたアクション映画。スポーツ万能だったディーゼルのエージェントぶりと異なり、今回は拳固で殴って相手を倒したりと、荒っぽいアイス・キューブのエージェントぶりが楽しい。またエージェントといえば007よろしく女性の扱いもうまいものだが、今回はキューブのキャラを活かして女よりも食欲に走りがちな設定にしたのももユニーク。前作を引きずらずに見れば楽しめるはずだ。(横森文)

こういう荒唐無稽でバカバカしい映画、わたしは好きだ。まあ批評的に観れば色々と議論の余地――日本ではおよそ考えられない、自国の国家転覆を狙うテロリズムをヒーロー映画のネタにしちまうアメリカ人たちの感性とか――そういうのをわたしは「バカバカしい」と呼ぶのだが――はあるのだろうが、メシ食いながらのそういうテレビの見方をわたしは知らない。

アイス・キューブIce Cube)演じる主人公のダリウス・ストーン(Darius Stone)が黒人なのに対して、国家転覆を狙う悪役がウィレム・デフォー(Willem Dafoe)演じるジョージ・デッカート(George Deckert)が白人という、バカでもわかる勧善懲悪の対立軸である。見事に敵側に黒人が出てこない。そういや、こないだまでアメリカさんの大統領をやっていたあの戦争屋も、白人のジョージ・ナントカさんと仰ったような。それはさておき、自国を舞台にしたヒーローもので、主役が黒人というアメリカ映画って、そういやあんまり聞かないと思うんだけれど、どうなんでしょう(わたしが映画に詳しくないだけかも)。

もう一つ気になったのは、大統領を演じる役者(ピーター・ストラウス Peter Strauss)はまだ白人だったことだ。ようやく黒人もヒーローになれるようにはなったが、05年当時は、まだ大統領にはなれなかったのだろう。09年のこんにちは、映画の世界を追い抜いてしまったのだ。これからのアメリカ映画において、黒人の大統領が登場するかどうかは、注目に値するであろう。

ところで、アイス・キューブがヒップホッパーでもあることから、この作品にはヒップホップの要素が多用されている。作中で言われていた「戦争は一時のものだが、私の部下は永遠だ」(うろ覚え)という一節は、ヒップホップの歌詞の一部らしい(作中で明言されている)。またカーチェイスの場面でもヒップホップ音楽が流される。

そういえば、街中を「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ」と大ヴォリュームでヒップホップを垂れ流して走っているクルマがある――ああいうのも、「痛車」と呼ぶべきだろう。自分はドキュソですよと言ってしまっているようなもんだ――が、スピードをぶっ放してクルマに乗るんなら、ヒップホップよりもヘヴィメタルのほうがピッタリだと思う。わたしは郷里で、DRAGONFORCEをかけながら一般道で軽自動車に乗って100キロ近くまでぶっ飛ばすのだが。