コラム:第66回

Metal-Temple.com『MIND ODYSSEY: BEST OF 15 YEARS』

MIND ODYSSEYは最初に制作したデモテープで聴衆に衝撃を与え、物凄い反響を受けた。とりわけ太陽が昇り来る国〔恐らく日本のこと〕からの反響は大きかった。メディアからのこうした好意的な反応は彼らにレコードを国際的に制作、発表するための契約をする機会を与え、彼らはデビューアルバム『KEEP IT ALL TURNING』を1993年の半ばにとうとう発表した。彼らのセカンドアルバム『SCHIZOPHENIA』〔1995年〕は、ギターとキーボードを担当したヴィクター・スモールスキ〔Victor Smolski, 1969-〕と共に制作された。ヴィクターはのちにRAGEに加入し、『GHOSTS』〔1999年〕の制作に加わったことでメタルシーンに広く知られるようになった。

さて、ヴィクターは彼のトレードマークであるギターサウンドと、彼のクラシック音楽の素養でMIND ODYSSEYに新風を送り込んだ。続く2枚のアルバム〔『NAILED TO THE SHADE』1998年、『SIGNS』1999年〕で彼らは、パワーメタル、そしてプログレッシヴメタルバンドとして確立され、大勢の聴衆の前で演奏する機会を与えられた。

そして、約15年を経てMIND ODYSSEYは再び精力的に新しいアルバム作りの準備に入っている。新作はナパーム・レコード(Napalm Records)*1から発表される予定だ。その合間にバンドはベストアルバム『BEST OF』〔2008年〕を発表し、デビュー15周年を祝い、メタルシーンの関心を刷新した。

『BEST OF』はそのために新たに録音された"Raven & Swan"で幕を開ける。この曲は速いテンポの曲で、明らかにRAGE風のものである。ここに収められた楽曲群を聴いていて、私は自らのお気に入りバンドであるRAGEにスモールスキがどのぐらい影響を与えているかに気づいた。スモールスキには、クラシック音楽ヘヴィメタル音楽を融合させることについては、生まれもっての才能がある。彼のギターフレーズとスケールには、クラシック音楽からの多くの引用を見出すことができ、それらは力強く、そして明らかな独自の音を作り出すメタルの輪郭で包まれている。こうした音作りの傾向は"Man Of No Return"に見出される。この曲は交響曲的な管弦楽とともに始まるが、とてもスムーズにメタルサウンドに移行するので、違いはわからない。マリオ・ル=モールの声は、ピーヴィ・ヴァーグナー〔Peter "Peavy" Wagner, 1964-〕がジェイムズ・ラブリエ〔James LaBrie, 1963-〕(DREAM THEATER)と出会ったようだと説明されうる。、つまりヴァーグナーのパワーと、ラブリエのメロディが融合したというわけだ。選曲はバンドの歴史を十分に押さえている。確かに、スモールスキ時代に焦点が当てられているけれども、実際4枚のアルバムのうち3枚に彼が関わっているので、論理的な当然の帰結である。

このベストアルバムが、このバンドを初めて知るための素晴らしい機会であることは間違いない。というのもこのバンドはいくらか過小評価されたり、それどころか完全に忘れ去られているからだ。〔このアルバムには、〕"Nailed To The Shade"(大げさなお世辞ではない)や"Apollo 13"、"Illusions"のようなプログレッシヴメタル志向の楽曲や、"Born Bastards"や"Possessed By You"のような、より速くてよりヘヴィーな楽曲も収録されている(後者はRAGEが演奏する音楽の領域に接している)。メロディの点で言えばキーボードはギターと競い合い、スケールは私たちの耳を揺さぶろうとしている! パワーメタルの輪郭を大げさに描写することは、ここでは余計なことかもしれない。なぜなら多くのわくわくするようなことが、あなたがたを夢中にさせるために待ち受けているからだ。

私は、このアルバムに関する私の意見を読者諸賢に理解してもらうために、十分な記述を行ったと思っている。もしある人がRAGEファン(以前の彼らも含めて)であり、そして伝統的なプログレッシヴメタルを聴くのが好きならば、このアルバムをぜひ聴いてほしい。結局私が言いたいことは、このバンドを覚えておき、これから彼らが何を発表するのかを実際に知っておくことは素晴らしいということである*2

*1:オーストリアに本拠地を置く、主としてヘヴィメタルを多く取り扱うレコード・レーベル。http://www.napalmrecords.com/(08年7月29日現在)

*2:http://www.metal-temple.com/review.asp?id=3046(08年7月29日)http://www.metal-temple.com/site/catalogues/entry/reviews/cd_3/m_2/mind_odyssey_-_best_of.htm?root=23(引用元のアドレス変更につき。10年5月14日確認)〔 〕内は訳者の補足。