足湯に浸かって、2キロ泳ぐ――片田舎の生活
郷里郡山に帰省して、一か月が経とうとしている。
完全に帰京するタイミングを失った。
ま、もともと今夏の異常気象――私のデジカメには8月11日(土)に撮影した、37度を示す新橋駅前温度計の画像が残っている――から避暑するための帰省で8月一杯滞在するつもりだったし、いまは台風で首都圏が大荒れ、そして都心ではすでに公開が終わっている成海璃子主演の映画「あしたの私の作り方」が福島市で9月8日(土)から公開だというので、とにかくソレを観るまではこっちにいることにした。
実家での生活はまことにグウタラしたものである。
昼過ぎまで寝て、午後はマンガを読むか、市内に住んでいる祖母のお使いをしたりするか、とにかくニートのような暮らしぶりである。
あ、あと約4年ぶりの新作小説を書いてるわ。
あまりにグウタラしすぎて体がなまってきたことを如実に痛感していたので、拙宅から車を飛ばすこと30分、公営の施設で温水プールや温泉、催事施設を備えたユラックス熱海(郡山市熱海町)へ向かった。泳ぐためである。同じく帰省中の愚弟を伴った。
休館。
「大体ね、アンタいつもこうなんだよ、事前にちゃんと調べればわかったことでしょー?」
「がたがた言うんじゃないよ、こういう公営施設が正月以外に休みになるなんて想像できないでしょ? 鈴虫が!」
「水曜どうでしょう」における大泉洋と藤村忠寿ディレクターの遣り取り風に聞いていただきたい。
せっかく磐梯熱海まで来たので、鉄ヲタの私は磐越西線の磐梯熱海駅を拝みたくなった。すると、駅前に足湯があるではないか。
「足湯でごまかそうったてねえ、そうはいかないんだよ! あんたこの足湯に全身浸かりなさいよ!」
小さな子どもを連れた家族、近所のおばあちゃん、温泉を探す老夫婦と、足湯はにわかに賑わった。
特におばあちゃんがやたらと話しかけてくるので、私たちも彼女に合わせて郷土の言葉で、しかも敬語を使わず応じた。「おばあちゃん、電車を待ってんの?」
足湯に浸かって我々の血行は促進されたが、運動不足は解消されなかった。
次は郡山市中心部にある施設「ぺアーレ郡山」(郡山市桑野)に向かった。こっちは確実に開いている。
かなり臭い更衣室を抜け、プールに向かうと、どうも小さい。泳いだ感じも、どうも25メートルあるとは思えなかった。しかも監視員に聞いても「わかりません。」何でやねん。
とりあえず15メートルと仮定して、140本70往復すれば2100メートルである。2キロというのは、私が普段一度に泳ぐ距離である。
小さな親子連れ、メタボな中年男性女性をかき分け、私はもくもくと泳いだ。
2100メートル(仮)、90分弱泳ぎきった私は、吐きそうだった。時刻は午後6時半を回りそうだった。
私たちと入れ替わりに、ぞくぞくと中年の利用者が十数名、指導者と思しき人物の掛け声とともに準備体操をし、入水していった。
「ぺアーレ郡山」は、社会保険健康事業財団という“イワクつき”の団体が運営している施設である。11月28日をもって同財団のによる営業は終了することが予定されているが、建物のロビーには、20000人以上の存続嘆願署名が集まっている旨を記したポスターが掲げられていた。
郡山市は商業都市で、文教政策に全く興味がないバカな自治体だが、市の中心に全天候型の温水プールくらい残してもよい、否、残すべきだろうと思いながら、自宅からの強制送還命令にせっつかれて、「ぺアーレ郡山」をあとにした。