それでもやっぱりテレビ好き

先日大学院の授業で、舌津智之*1増田聡*2の日本の歌謡曲に関する論文を読み、それに基づいて発表を行った。彼らの論文には坂本九ぴんからトリオ松田聖子中村一義忌野清志郎椎名林檎といった固有名詞が頻出するが、私はそれに輪を賭けて聖飢魔II尾崎豊、挙句の果ては岡田有希子と言った歌手やアイドルの名前まで出した。

他の学生はきょとんしていた、というか引いていた。

大学院で経済学を専攻している高校以来の知己は、テレビを持っていないという。どうも一般的にエスタブリッシュでソフィスティケイトされている日本の大学院生は、テレビなんて見ないらしい。

しかしながらおれは、ハンナ・アーレントの著作を中心としたナチスドイツ型全体主義の研究者というのは世を忍ぶ仮の姿であり、その実態はヘヴィメタラーでテレビやマンガやアニメを愛好し、そして鉄道オタクなのだ。おれは異端の大学院生だ。

このブログには、顔を知っている数人の友人を除けば、固定の読者はいない。今まで考えてはいたのだが、哲学や政治学の話とか、社会問題に対する批判なんて誰も読みゃしないのだ。だっておれだって、ブログで語られている哲学的議論なんか面倒くさくて読んだことがない。

だから今回はテレビについて大いに趣味丸出しで語る。これを読まれて引かれたところで、おれは気にしなーい。そんなこたぁ折り込み済みだ。


7〜9月の今クールのドラマは、各局気合いが入っている。若手女優が出まくっている。一部の女優は学齢期(18歳)を超えてスケジュールを押さえやすくなったのだろうが、それにしても一考の余地はありそうだ。

というわけで、おれは普段はテレビドラマなんて見ねえんだが、今週一週間(7月9日から14日)はドラマを見まくった。初回が多いからだ。

月曜9時『ファースト・キス』(フジテレビ)

主演の井上真央(おれはこいつの名前が嫌いだ)はどうやら数字を稼げるらしい。おれは見ていなかったが、TBS『花より男子』第二シリーズは軒並み20パーセントを超えている。7月8日の『メントレG』(フジテレビ)で言っていたが、明治大学文学部演劇学科で学んだ成果か否か。

おれとしては、彼女には『キッズウォー』シリーズ(TBS)で暴れまくっている破天荒な少女という印象が強い。このドラマは「花王愛の劇場」で午後1時から放映されていた。おれはあんまりちゃんと見ていなかったんだけれど、それでもそういうイメージが記憶に残っているということは、夏休みの子どもたちが主な視聴者層として念頭に置かれていたからだろう。井上(1986年生)と二歳しか違わないおれ(1984年生)は、当時(も今も)ああいう暴れ女が嫌いだった。

だから『ファースト・キス』では、おれが原体験した井上真央が戻ってきたという感じだ。福永美緒という役柄は、牧野つくしよりも今井茜に近い。そして三者に共通するイメージはツンデレであり、ツンデレを演らさせたら井上は当代一の女優なのかもしれない。

おいおい述べるが、今週見てきたドラマに比べて、やはりフジテレビはドラマ作りが上手い。あんまし見ないおれでさえも、結局最後まで、トイレを我慢してまで見せられてしまった。伊藤英明は背も高いしいい男だが、ダメ男、間の抜けた男を演ったほうがはまっている。伊藤の同居人で友人役を演じる劇団ひとり阿部サダヲが出てきたときはクドカン脚本か?と思ってしまった(『ぼくの魔法使い』同様、伊藤英明も出ているし)が、脚本は井上由美子。多分本作は今クールで一番当たるドラマだろう。

火曜9時『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ)

堀北真希演じる主人公芦屋瑞稀が、惚れた男のいる男子校へわざわざ男装して転向していくというジェンダートラブルな物語。大学院でジェンダー論に触れたおれとしては、その点でもこのドラマは興味深い……が、いまはベンキョーの話は止しておきましょ。

男装する女子高生役として堀北に白羽の矢を当てたのは、正解なのではなかろうか。身長は女性としてはそこそこあるが、胸が小さいというのは、もってこいである。確かに顔も中性的な顔立ちである。おれはフジテレビの本社で共演の小栗旬生田斗真に挟まれた堀北の巨大番組宣伝ポスターを見たが、最初は誰だかわからなかった。そのくらいはまっている。やっぱりフジは上手い。

このドラマの大問題点は、原作マンガで16〜17歳という設定の主人公たちが、どうして19歳の堀北に、24歳の小栗旬に、22歳の生田斗真(最初見たとき、つるの剛士かと思った……)に、24歳の石垣佑磨になるのかというところだろう。ジェンダートラブル以前に、年齢詐称問題を解決する必要があっぺョ。ゲイの保健医を演じる上川隆也がいい感じ☆ 元暴走族の宇梶剛士が教頭役だし、このドラマは色々と顛倒しているものがある。

余談だが、ジェンダートラブルで言えば、堀北真希よりもうちの愚弟(中学三年生)のほうが女顔である。おまけに飛鳥と書いてアスカという名前をつけられてしまったものだから、言うまでもなく小学生の頃までしょっちゅう女に間違われ、その反発か中学校では野球部に入り坊主頭になってしまった。やれやれ。

水曜10時『ホタルノヒカリ』(日本テレビ

おれはベタな恋愛モノは苦手だ。おまけに本作は出演者がぱっとしない(「どうでもいい歌唱力 by だいたひかる」の藤木直人とか)。だからおれは、見続けないだろうなあ。

何が違和感かって、おれと同い年の綾瀬はるかが、ああいうやさぐれたOL役を演っている
っていう点だ。もちろん実年齢と作中の年齢とでは違うだろうが、自分と同い年の役者がこういう役を演じるようになったのかと思うとちょっとショックだった。orz

とか言いつつ、今のおれは髪が長くなってきているので、頭の上でチョンマゲを結びつつ、バンダナ代わりにタオルを巻いているので、この干物女と変わらない。悲しいけどこれ、現実なのよね。

もう一つ目を引いたのが、どうでしょうファミリーの安田顕である。このドラマは明らかに『anego』『ハケンの品格』の系譜を辿るものであるが、『ハケン』での大泉洋同様に、このドラマの制作者は水どうファンなのかしら、と思っていたが『ハケン』にもヤスケンは出ていた。後述するが『受験の神様』にはファンタジー森崎も出ているので、今期はどうでしょうファミリーがよく見られることになりそう。

土曜9時『受験の神様』(日本テレビ

敢えて言おう、おれは成海璃子の大ファンであると!!!!!! だからこのドラマも見るわけだ。

何と言うか、骨格がいい。璃子ちゃんは「正統派美少女」なんて呼ばれているが、数多の類をかき集めれば美少女などと呼ばれている女は掃いて捨てるほどいるわけだ。けれども彼女は女性にしては声が低い。声がいいということは、骨格がいいということである。おれにここまで言わせるとは、そうとう稀なことである。

おれは女嫌いである。ミソジニストである。友人にはジョヒ(女卑)っているとすら言われたことがある。これは小中学校時代に同級生のバカな女どもに虐げられた経験に由来するものだが、こういう女って往々にして、キャンキャン甲高い声を出すものだ。だからおれは、柳原可奈子が演じる女子高生や女子大生は大嫌いである(面白いから見ちまうんだが)。

おれとしては、璃子ちゃんに対しては、もはやただの「かわいい」ではなく「めんごい」と言いたい。めんごいというのは我が郷里福島県の方言で「かわいい」という意味であるが、我が母語にはかわいいを遥かに上回るvery very cuteぐらいの意味を被けずにはらない! ああめんごい! フィクションの女の子にこれだけ萌えたのは高瀬瑞希(『こみっくパーティ』)以来であろうか。(=´Д`=)ニヘラ

でも多分、3か月で冷める。蒼井優のときは『フラガール』を観に行ったら満足した。まあドラマも3か月で終わるから、その間は持つだろう。

本題に入る前に、もう一つ。このドラマも例の如く番宣が日テレの各情報番組で行われたのだが、成海璃子がほとんど喋らなかった。6日の『ズームイン朝』では共演の森崎博之、長島弘宣(みつき)と共にVTR出演をしていたが、ファンタジー森崎ばかりが喋りやがって璃子ちゃんが喋らない。おれは彼女のあの声が好きなのに!

今日7日の『おネエ★MANS』(司会は山口くん)には、ばっちりスタジオにいたにもかかわらず、オジバというか、組合員というか、それらジェンダートラブルな出演陣ばかりがしゃしゃり出て、ほっとんど写りもしない。何ということか?

思うに、彼女は性格が悪いのではないだろうか。6月7日の『とんねるずのみなさんのおかげでした』の「新・食わず嫌い王決定戦」に出演した際に、おれは初めて素で喋る彼女を見たのだが、結構気の強い性格だと思った(仕事の悩みを母親に相談するのかと問われて「なんであんな人に相談するんですか!」という発言とか)。

喰いタン』の京野ことみ演じる尾方桃など、適度に声が低くて性格が悪い女は嫌いではない。幸運なことに、おれこそが性格最悪で、俺より悪い人間はそうそういないからだ。まして璃子ちゃん演じる菅原道子は「受験マシーン」で、あの性格の悪さは同局同時間枠に放送された『女王の教室』の阿久津真矢ほ髣髴とさせる。恐らく『女王』と同様に、道子がそのような性格になったのも、自身の受験経験が関係していると予想される。

小学や中学といった若年児童の学校受験を軸に描かれるドラマというのは、おれにとっては1994年の『SWEET HOME』(TBS)以来である(他にあったとしても、大したことはないものだろう)。おれは研究テーマとして格差社会も持っているので、どうしても教育格差もまた視野に入ってくる。おれ自身は田舎で中学までのほほんと鼻水を垂らして過ごし、高校受験はちょっと踏ん張って地域一番校(と言われている高校)に入ったので、こうした「お受験」というものがわからない。その点でも本作は、興味深い。

だが正直に言って、この初回はあんまり面白くなかった。璃子ちゃんがあまり出なかったこともそうだが、正直山口くんの父親役がビミョウである。まあコメディじゃないので、初回からノリよくというわけにもいくまい。辛抱強く見続けよう。

成海璃子についてはさんざん語ってきたが、山口くんの息子・広役、長島弘宣もまた相当上手い子役である。長島くんは『誰よりもママを愛す』(TBS)で田村正和の息子役を演じていたが、両作通じて、泣きの演技は見事である(因みに成海も相当の“泣き俳優”である。『介助犬ムサシ学校へ行こう!〜』でおれは彼女のファンになった)。

前述の通り水どうファミリーの森崎くんも出ているが、彼を全国放送で見たのでびっくりした。この森崎くんと大倉孝二ってちょっと被っている気がした。似ている。作中で広が志望する「昨年度野球部が甲子園で優勝した高校を持つ早田中学校」のモデルは言うまでもなく、早稲田実業高等部と中等部である。

*1:「昭和の裏声――歌謡曲ジェンダー」『ユリイカ』1999年3月号所収。

*2:「誰が誰に語るのか――Jポップの言語=音楽行為試論」『ユリイカ』2003年6月号所収。増田のウェブサイトは以下。http://homepage3.nifty.com/MASUDA/