“業界”に片足を突っ込みかけつつ


画像で示したのは、最も権威ある独独辞典Dudenの第6巻目の最新版である*1。画像ではわかりにくいかもしれないが、実はまだ購入時にかぶさっているビニールをまだ外していない。手元に届いたばかりのものである。表紙に書かれているドイツ語Das Aussprachewörterbuchとは「発音辞典」の意で、13万語以上の単語の発音が網羅されている。

プロフィールにも記した通り(今日現在)、先日都内の大学院に合格した。そして今日、大学の卒業が確定したので、これで問題がなければつつがなく進学することになりそうである。

すると、私が2年間お世話になったドイツ語の老教授が、「お祝い」と言ってこの辞書をくれたのである。しかも恐らく、わざわざ買ってくれたのである。やはり大学教授は金を持っている。彼は私が院受験をするにあたって私に文字通り、ドイツ語の“特訓”をしてくれた。私の院合格は彼に負っている部分がかなり大きい。

私は自校の大学院は選ばなかった。進学する予定の大学院自体は大層古いのであるが、進学する予定の研究科はいわゆる「学際系」で、まだ新しく、私が11期生になる。

そもそも学際系の大学院研究科は、東大の総合文化研究科ですら1983年設立の24年目であり、大体どこも新しい。仲正昌樹が東大駒場に入ったのはそこの設立9年目(1992年)であり、小熊英二は10年目(1993年)、東浩紀は11年目(1994年)だった。

ならば私も、若い大学院で、未だ方法論が定まらない(それこそが特徴でもある)学際系の領域で好き勝手やってやろうと思っている――別に上に挙げた学者たちが好き勝手やっているわけではないが(案外そうも言えるか?)。

奇しくも上で紹介した老教授こそは、私が在籍した文学部の教員ではなく、学際系のはしりのような学部の教員である。私は彼の勧めに従ってこの大学院を受けたわけだが、彼が敷いたレールに上手くおだてられて乗せられた感がしなくもない。文学部の学生である私に対して最初に「君は文学部や文学研究科に向いていない」と言い放ったのは、この御仁であった。

かくして私は、「独文学生」の暖簾を下ろすことになった。けれども、あるいは、だからこそ、「ドイツ」ということ/ものに固執することになりそうである。けれども、所属大学院の特質上、「ドイツ」だけにこだわる必要もなくなったのである。当面の私の目標は、半年前に放り出したフランス語の再開である。

*1:Dudenverlag, 2007. ISBN:3411040661