It is only Heavy Metal that doesn't betray me!

本日、ラウドパーク06(@幕張メッセ)に友人Kと行ってきました。この日本発のヘヴィメタルフェスティヴァルは本日14日と15日の2日間開催なのですが、私たちは初日のみの参戦です(というのも、チケットを取ろうと思った時点で2日券は売り切れていました)。

私は、6月にどハマリして以来1日1回は3枚のアルバムを聞き通すDRAGON FORCEの生ライヴを初めて見たかったから行ってきたのですが、メタル仲間Kを誘ったところ、彼もグラインドコアバンドNAPALM DEATHを聴きたいということで意見一致。会場最寄駅の海浜幕張で午前10時半に待ち合わせをしました。11時からのFLYLEAFに間に合わせるためです。

……だったのですが、2人とも遅刻をし、寝坊した私も、夜勤バイト明けのKも朝から何も食べていなかったので、駅の中にある吉野家で私は豚丼、Kはチャーシュー丼を食べてから乗り込むことになりました。お陰でFLYLEAFは観れませんでした。


因みにこのラウドパーク06は、幕張メッセの9、10、11ホールを開放して使用し、3つのステージで順番に演奏されるというものでした。つまり、1つのステージが塞がっているときに、他の2ステージでは次のバンドの演奏準備を行うことができるわけです*1


私たちが最初に聞いたのはスウェーデン産のOPETH(しかし途中から)でした。因みに、以下が、今日私たちが聞いたバンドです:OPETH、DRAGON FORCE、CATHEDRAL、ANGRANAPALM DEATH*2OPETHはCDすら聞いたことなかったのですが、まとまっていた演奏だったと思います。いま伊藤政則のラジオ番組POWER ROCK TODAYを聴きながら書いているのですが、ここでも私と同じステージを見たリスナーから、このライヴに対する感想がメールで送られてきていて、結構よかったとの声が多いようです。

DRAGONFORCEのライヴ*3は、正直あまり上手いとは思いませんでした。ドラムの音はこのバンドの売りの一つですが、今回のライヴでは(でも?)その音が大きすぎて、その他の音を掻き消してしまうようなくらいでした。あれは音の調整が適正ではないでしょう。私が数えただけで5回も起きたハウリング・ノイズによる音のブツ切れが、その証拠ではないでしょうか。

更に、ハーマン・リィにせよ、サム・トットマンにせよ、ギターソロを弾くときのアクションが地味で面白くありません。あの超速弾きではポーズを作っている余裕がないのかもしれませんが、ライヴで再現できないことはCDでもやるべきでないというのが、ヘヴィメタラーの共通見解だと思います。

ヴォーカルも、ドラムの音が大きすぎたとはいえ、声の小ささが露呈したのではないでしょうか。終演間際には、高音が出なくなってへばっていたのも気になります。これはヘヴィメタルのヴォーカリストには避け難い肉体的限界ですが、上手いこと誤魔化すのも技術だと思います(ロブ・ハルフォードやブルース・ディッキンソンはこういうワザがやはり上手いです)。

Kは、あのスピードを全員で合わせているのは凄かったと評価していましたが、スピードすら合わなかったら、このバンドは存在価値を失ってしまうでしょう。ただ、最後の曲"VALLEY OF THE DAMNED"で、リィがザクのヒートホーク・ギタ、トットマンがガンダムビームライフル・ギターを持ち出して弾いていたのは笑えました。そのあとトットマンは更に「ドラえもん・ギター」と交換して弾いていまし*4。この辺りに、彼らが日本のマンガやテレビゲームと親しんでいたことが示されています。

あと、のちにKが言っていたのですが、「ドラフォのモッシュが一番ヤバかった」とのことですが、私も冒頭からモッシユに巻き込まれて汗だくになってしまいました。しかしこれも後ろに下がってみると、特定の十名余りが聴衆の塊を押しているのでし――この場所をモッシュピットと言います。ライヴを観に来ているのか、不細工なダンスを踊りに来ているのかよくわからないこのアホメタラーどもに私は大層頭に来たので、自分がぶつかられたときに思い切り(暴力的に)押し返してやりました。そうするとメタラーってのは一般的に痩せっぽち(とマーティ・フリードマンも言っていました)で非力なので、驚くほど簡単に押し返されてくれるのでした。大学の授業ではありますが、ウェイトトレーニングで体を鍛えていてちょっとよかったなと思いました。

DRAGONFORCE LIVE (Oct. 14th, '06. Sat) at Makuhari Messe, Chiba, Japan (on Loud Park '06)

  1. MY SPIRIT WILL GO ON
  2. OPERATION GROUND AND POUND
  3. REVOLUTION DEATHSQUAD
  4. TRAIL OF BROKEN HEART
  5. THROUGH THE FIRE AND FLAMES
  6. VALLEY OF THE DAMNED

DRAGONFORCEの終演後、流石に一度会場を出て、休憩所に座り込みました――会場の外には食べ物や飲み物の売店、喫煙所や休憩所が設けてありました。来ていたTシャツは汗で水に浸かったように濡れていて、着ている意味もないほどでした。いずれにせよ寒かったので、Kに「キタナイものを見せるな」と言われながら上半身裸になりました。まあ、男であれ女であれ、殆ど裸みたいな人はたくさんいて、それがライヴというものでしょうが――以前友人(女の子)が「ライヴで汗だくになり、前髪の先から汗が滴るぐらいだった!」と言われてドキドキしたことがあります(これがかなりカワイイ女の子なんだ!)。f(=^_^=;;)

次に聴いたのは、後述するNAPALM DEATHの初期メンバーも在籍するCATHEDRALでした。NAPALM DEATH好きのKの要望でしたが「本当に元NAPALM DEATHか」と思うほど違った音楽でした(まあ日本の歌謡曲が好きな人に言わせれば、同じようなものなのでしょうが)。尤も、私はCATHEDRALを予習なしで聴いてしまったので、あまり乗れませんでした。

ただこのとき、私の目の前で、殆ど裸(黒いホットパンツにブラジャー)のような女性がノリノリでした。しかもこの人ヒールの高い靴を履いていたのか私と同じくらいの身長(170センチ)で、長いツインテールヘッドバンキングで振り乱しておりましたので、毛先が私の顔に当たり、シャンプーの残り香がドキドキちょっと鬱陶しかったです。

そのあと、唯一の日本からのバンドであるDIR EN GREYを聴いてやろうと冷やかしで隣のステージに移動しましたが、3曲ほど聴いて出てしまいました。私の「ヴィジュアル系」嫌いもありますが、「他の出演バンドと音楽性が合わない」と2ちゃんねるで叩かれていたというようなウラ話を抜きにしても、少なくとも私には聴く価値はありませんでした。

DIR EN GREYは海外での評判は高く、例えばドイツ・ベルリンでは単独公演も成功させています。またアメリカのバンドKORNからも賞賛を受けたそうです。しかし"V Rock"を自称し始める前の彼らがなぜ「ヴィジュアル系」と呼ばれていたか、つまりどうして「メタル」も「ロック」も冠されていなかったかを考えれば、2ちゃんねるで叩かれていた理由もわかるかと思います。つまり彼らはやっぱり「日本の歌謡曲」で、どうしても海外のメタルを聴きなれている人間の耳とは親和性を持ち得ないのです。

例えば彼らの歌詞だけを取り上げてみても、前世紀の末までにL'ARC EN CIELがやり尽くしたような官能的かつ耽美的世界観は、やはり日本の、それも「ヴィジュアル系」に特有のものでしょう。日本語を解さない海外の聴衆は、派手なステージ演出だけを見て、例えばMARILYN MANSONのような、シアトリカル(劇場的)なバンドだとは思われ、また支持されるでしょうが、日本人にはその歌詞世界がダイレクトに入ってくるので、英語に慣れてしまっている日本人のメタラーには、逆説的に受け入れられないのです。

尤も、ドイツのTOKIO HOTELに見られるような「外見的な日本のマンガ・アニメ趣味」がヨーロッパで支持されていることから来る人気もありえるでしょう。イギリスのグラムロックが、のちの日本での「ヴィジュアル系」の萌芽となったとは井上貴子らが指摘するところです*5が、そもそもヨーロッパに「ヴィジュアル系」の受け皿が、今となっては日本以上に用意されていたとは言えるかもしれません。

……というのが、K曰く「メタル右翼」「メタル原理主義者」の私の、「ヴィジュアル系」に対する雑感でした。f^_^;;

2バンドをマジで聴いてしまい本当に疲れたので、一度落ち着こうということで、再び会場の外に出ました。そんなわけでARCH ENEMYとFIREWINDは諦めてしまいました。ARCH ENEMYは最後を少しだけ見ましたが、メチャクチャ盛り上がっていたので、勿体なかったと後悔しました。デスメタルなのに女性ヴォーカル、メタルディーヴァ(メタルの女神)のアンジェラ・ゴソヴの「胸の谷間が!」という感想が2ちゃんねるのメタル板にありましたし(笑)。

私がDRAGONFORCEと同様に楽しみにしていたのは、「南半球から熱い音楽を持ってきた」(終演後のMCアナウンスより)ブラジルのANGRAでした。カイ・ハンセンのチルドレンバンドの1つであることは間違いないですが、これで私は、ここ数ヶ月の間にドハマリした3つのバンド、DRAGONFORCEとイタリアのRHAPSODY、そしてANGRAのうち、2つを一日のうちに目の当たりにしたことになります。最高に幸せです。

ANGRAはデビューが1993年とDRAGONFORCEよりもキャリアが長いことから、ライヴもかなり上手い演奏と演出でした。例えば、ギタリストがソロを弾いているときは、ヴォーカリストは照明の暗がりに引っ込んで、観衆にギターソロを見せるとか。DRAGONFORCEはドラマー以外の5人が――キーボーディストでさえも、肩掛けのキーボードを提げて!――ステージを自由に動き回るので、どこに集中していいかわからないところがありました。DRAGONFORCEはANGRAを見習ってほしいと思いました。

正直、私はANGRAの全てのCDを聴いていたわけではないことと、9月末に出たばかりの新譜から新しい曲を演奏したこともあって、特に最初の方はわからない曲ばかりでした。しかし"SPREAD YOUR FIRE"あたりからやっと乗ることができました。インスト曲"UNFINISHED ALLEGRO"では彼らはパーカッション類の民俗楽器?を叩き、サンバのリズムを刻んでいました。こういう演出もすごく上手いと思いました。

最後の、佳曲"CARRY ON"から途切れることなく"NOVA ERA"へ繋がる構成も見事でした。"CARRY ON"を収録したアルバム『ANGELS CRY』で世に現れたANGRAがメンバーチェンジを経て死にかけていたところ、"NOVA ERA"を収録する『REBIRTH』で文字通り復活したというストーリーを彷彿とさせます。「新しい日が輝く/墜ちた天使も復活するだろう/新星の大爆発により灰に新たな命をもたらされる」(拙訳)というくだりを聴いたとき、感動して泣きそうになりました。ちょっと私自身も不幸続きなものですから。

ANGRA LIVE (Oct. 14th, '06. Sat) at Makuhari Messe, Chiba, Japan (on Loud Park '06)

  1. INTRO
  2. COURSE OF NATURE
  3. WAITING SILENCE
  4. ANGELS AND DEMONS
  5. SPREAD YOUR FIRE
  6. EGO PAINTED GREY
  7. WINGS OF REALITY
  8. REBIRTH
  9. NOTHING TO SAY
  10. UNFINISHED ALLEGRO
  11. CARRY ON
  12. NOVA ERA

最後に聴いたNAPALM DEATHは、個人的には演奏時間が1秒弱の曲"YOU SUFFER"で有名なバンドだと思います。ドラマーがカウントをとったかと思うと「ボッ!」で演奏終了という珍曲です。"You suffer, but why?"(「お前は苦しむ、しかしなぜ?」拙訳)と唄っているらしいのですが、やはり「ボッ!」としか聞こえませんでした。この曲もライヴで演奏されたのですが、私は油断して余所見をした隙に「ボッ!」とやられました。どうも、この曲はこういう不意打ち的にやる曲らしいです。

この英国バーミンガム出身のバンドは政治的にサヨクな人たちらしく、ジョージ・ブッシュがどうとか、トニー・ブレアがどうとか、f**kin' governmentがどうとか色々MCで言っていました。そういうの嫌いじゃないです。

ただ、イギリス他出身のDRAGONFORCEにも言えますが、英語圏出身のバンドはMCでもマジで英語を喋りまくるのですが、残念なことにちゃんと聞き取れている日本人は極めて少ないでしょう。私も何となくしかわかっていませんでした。他地域出身のバンドもMCは英語が基本なのですが、彼らも母語ではないので極めてゆっくり話してくれます。だから大学受験で英語を勉強しなければならなかった人ならば、まあ大体わかります。

因みに、このNAPALM DEATHの開演前に、カナダの文化人類学者サム・ダン氏が取材をしていました――あるいは、ドキュメンタリー映画「メタル・ヘッドバンガーズ・ジャーニー」*6を作ってしまうほどのメタル馬鹿、作中「大学にメタル学がなかったので仕方なく文化人類学歴史学を専攻した」と告白した、あのサム・ダンと紹介すべきだろうか(そんなことは、ジャーマンメタルが好きでドイツ語を選んだ私に言えた義理ではないですが)。なかなか感動的でした。ある男性が彼に話しかけて握手を求めていましたが、私は引っ込み思案なので、そこまではできませんでした。

NAPALM DEATHを、私はステージから距離を置いて相対する音響ブースの前で聴いていました。最前列のモッシュ避けるためです。Kは最前列でもみくちゃになって観ていたそうです。

このNAPALM DEATHを観ていて"おもしろかった"のは、ヴォーカルはヘアースタイルが坊っちゃん刈りで、黒いTシャツに短パンで左膝にはサポーターを巻いており、どこのオッチャンが庭仕事の途中に出てきたんだ?」と私は思いました。それで体をブルブル震わせ、ヘッドバンキングしながら絶叫するので、部分的に見れば何かの病気なのではないかと見えるのではないかと思いました――ええまあ冗談ですよ。

おまけに、ベースはともかくギターも、出演中一度も楽器を交換していませんでした。一般的には、ヘヴィメタルと言えど楽曲によって音を変えるので、楽曲に合わせたチューニングというものがあります。つまりNAPALM DEATHはどの曲も同じ音調で録音しているということになります。まあ、このテのバンドですから、それが流儀なのかもしれませんが。楽曲の良し悪し、演奏の上手い下手ではなく、「メッセージ」をいかにインパクトをもって伝えられるかということです。

ラウドパーク06の大トリは間違いなくMEGADETHなのでしょうが、私たちは見向きもしませんでした。スラッシュメタルに大して興味もなかったというのもありますし、私自身はデイヴ・ムスティンがあまり好きではありません。




幕張メッセを出たのが21時でした。どこかで晩飯を食って帰ろうということになり、Kは新宿区在住なので、東京都心に出た方がいということで、上野に出ました。各バンドともMCで「トキオー」と散々言っていましたが、あの鼠のテーマパークはすでに東京に編入されてしまった(勿論冗談ですよ)ようですが、当地は間違いなく千葉県千葉市美浜区であり、この辺鄙なところから上野までは1時間もかかってしまいました。上野の「大戸屋」で定食を食って解散しました。

帰宅後、私は3時に寝て3時に起きるという12時間睡眠を達成しました。そして案の定、風邪をひいてしまいました――この風邪は、10月22日現在、微妙に引き摺っております。

*1:http://www.loudpark.com/guideline.html#areamapを参照。

*2:当日のタイムテーブルはhttp://www.loudpark.com/timetable/index1006.htmlを参照。

*3:彼らの当日の様子は、http://www.loudpark.com/report/admin/upload/report14.php?ARTIST=dragonforceに詳細があります。

*4:ヒートホーク・ギターと、ビームライフル・ギターはhttp://www.hobby-nishina.com/gundam.htmを、ドラえもん・ギターはhttp://www.espguitars.co.jp/doraemon/index.htmlを参照。

*5:井上貴子、他『ヴィジュアル系の時代――ロック・化粧・ジェンダー青弓社、2003年

*6:http://www.metal-movie.com/