都心直結だけが能じゃない

asahi.com新京成電鉄京成電鉄に乗り入れ 来年度』

新京成電鉄(本社・鎌ケ谷市)と京成電鉄(本社・東京都墨田区)は、松戸―京成津田沼間を結ぶ新京成の車両が、京成津田沼―千葉中央間の京成千葉線に乗り入れることで合意した。両社合わせて約9億円をかけ、関連工事をし、06年度末までに実現させる。

新京成電車だけが乗り入れる「片乗り入れ」方式で、朝夕のラッシュ時間帯を除いた午前10時ごろから午後5時ごろまでの間が対象になる予定。

京成千葉線新京成線に乗り入れないのは、新京成線京成津田沼新津田沼駅間(1・2キロ)が単線で、輸送力に限りがあるためという。日中時間帯、上下線とも10分間隔で運行される新京成線のうち、2本に1本が京成千葉線まで乗り入れる見通しだ。

今年10月から京成津田沼駅構内で、新京成線から京成千葉線に乗り入れができるよう、線路を新設するほか、信号機や電気系統を整備する。新京成線の車両のうち11編成には、京成線内で対応できる列車無線を搭載する。

両社によると、京成千葉線の午前9時から午後4時までの利用客は約9千人で、このうち約3千人が新京成線との乗り換え客という。新京成電鉄は「乗り入れは乗客の『乗り換え抵抗』をなくす重要な手段で、これによって利便性を高めたい」としている*1

この記事で話題になっている新京成線は、千葉県松戸市松戸駅から鎌ヶ谷駅、船橋市の北習志野駅を経て、習志野市京成津田沼駅へと至る26.5キロの路線です。曲がりくねった路線形ですが、松戸から概ね南東へと下っていきます。京成千葉線は、京成津田沼駅から千葉市千葉中央駅を結ぶ12.9キロの路線です。新京成線の運営会社・新京成電鉄は、その名の通り、京成電鉄の子会社です。

地図を見ればわかりますが、千葉線京成津田沼を出てからすぐに千葉中央までJR総武線と完全に併走し、且つ栄えているのはいずれの駅もJR側であるなど、千葉市の中心部を走っているにも拘らず、閉塞間の漂うローカル線然とした路線です*2。おまけに、千原線(千葉中央〜ちはら台市原市])という、元々は千葉急行線という倒産した会社の路線に直通しており、おまけに都心へは直通していないので、完全にJRの後塵を拝しています。

方や新京成線は、路線は他社路線に直通する形ででも都心に直通することはなく*3、千葉県内で路線が関係しています。つまり神奈川県の相模鉄道と同じように、地域に密着した路線だという訳です。

新京成は京成のグループ会社であることを示す「K'SEI」ロゴを使用するなど、会社の系列的にも近く、今まで新京成線が京成のいずれかの路線に直通していなかったことの方が不思議ですらあります。それは恐らく、線路幅が同じであれ、搭載無線の規格が違うことなどに二の足を踏んでいたのでしょうが、競合するJRへの対抗のため、それ以上に迫り来るモータリゼーションの脅威に黙っている訳にはいかなかったのでしょう。

その時に、京成は千葉線を都心へと直通させるのではなく、新京成線に向けたことは賢いと思います。これにより、千葉市中央部と松戸市が一本で繋がったことになります。鉄道は都心への直通ルートばかりが重要視されますが、その外縁部にある街と街を結ぶルートは軽視されがちでした。埼玉県大宮へ同春日部〜千葉県柏〜同船橋を結ぶ東武野田線は昔からありましたが、東京都府中市の府中本町〜埼玉県南浦和〜千葉県新松戸〜同西船橋を結ぶJR武蔵野線の開業は1973年です。都心の外縁を走る環状7号線や8号線道路などの渋滞は慢性的で、都心ではなく、外縁間を移動したい人にとっては移動のロスを強いられていました。

元々がローカル線然とした千葉線ならば、いっそ新京成線と一体化して千葉県民の足となる方向を目指した方がいいと思います。日中の時間帯だけというのは、恐らく千葉、松戸双方への買い物客を見込んだ計画でしょうが、早く全時間帯に渡った直通運転にすべきだと思います。また更に、快速運転があると便利になるでしょう。そのためには引用記事でも触れられている通り、新津田沼京成津田沼間の複線化が必要でしょう。そしていずれかは千原線にも直通することにより、両線の価値が向上すると思います。

*1:親記事はhttp://mytown.asahi.com/chiba/news02.asp?kiji=5286だが、掲載期間終了のため、引用者はhttp://www.maku-jyo.com/cgi/QA/QA-touroku.cgi?mode=syuusei&no=1930&page=1より孫引きした。

*2:http://www.geocities.jp/daijitk/kanntoutetudoumeguri/kantou051208-2.htmlに詳しい。

*3:かつて北総開発鉄道(現・北総鉄道)と相互直通していたことはあったが、現在は解消。