How do we analyse the Rainbow Legend?

先日地元の図書館に行ったとき、そこのCDコーナーで梶山章<G.>や森川之雄<Vo.>らのプロジェクト「虹伝説」のアルバム『虹を継ぐ覇者』*1を発見した。梶山章と来て、虹と来たらRAINBOW('70〜'80年代に活躍した英国のバンド)のカヴァーアルバムか、と想像できた人は結構なヘヴィメタルフリークである。

梶山章というと、元RAINBOWの3代目ヴォーカリストであるジョー・リン・ターナーのソロプロジェクトやそれに伴うツアーでもギタリストを務めたことがある。私はターナーのソロ作を聞いたことはないが、まあ多分後期RAINBOWを彷彿とさせる音楽なのだろうと思う。ライヴではRAINBOWの名曲も演奏していることは雑誌などに掲載されているセットリストからわかる。

そうしたギタリストたちによるRAINBOWのカヴァーアルバムである。しかもこのアルバムは先に述べたターナーと、やはり元RAINBOWのキーボーディスト、ディヴィッド・ローゼンタールがゲスト参加している。これが機縁で「梶山のジョーのアルバムへの参加が実現する発端となった」*2そうだ。

私がこのCDを借りて聴いてみた理由は、私もRAINBOWのファンだからである。主に初代ヴォーカリストロニー・ジェイムズ・ディオ時代の、モロ様式美で、後のヘヴィメタル勢に道を開いた曲が好きなのだが、2代目のグラハム・ボネット時代に唯一出した『DOWN TO EARTH』も悪くない。しかし、ターナー期の、アメリカを意識したポップなロック曲は大して好きではない。それでもボネットのヴォーカルを前提としつつも彼の脱退に伴いターナーによって唄われた『DIFFICULT TO CURE』の楽曲は悪くはないと思っているが。

しかし残念なことに、私見によれば、森川のヴォーカルはジョー・リン・ターナーのそれに似ている。酷似していると言っても過言ではないと思っている。マニアックな分析をするとターナーとボネットの中間という印象だが、それでもターナーに寄っている。そもそも声質が似ているのだろうが、スタイルも似ている。2曲目"SPOTLIGHT KID"ではターナーとツインヴォーカルで交互に唄っているが、正直あまり聞き分けられない。

そんな塩梅のヴォーカルだから、後輩の2人とかけ離れた個性のヴォーカリスト、ディオ時代の曲を森川が唄うと、私としては大いに違和感がある。ボネット時代の曲は、まあまだハマっていると思うが。そんな訳で#1"KILL THE KING"、#4"MAN ON THE SILVER MOUNTAIN"*3、#7"STARSTRUCK"は面白くない。ターナー期RAINBOWのライヴを見ていて、ターナーの唄うそれらの楽曲に親しみを覚える人なら別だろうが。

特に、最後を締め括る(といってもCDトラックとしては13曲あるのだが)11曲目の"A LIGHT IN THE BLACK"は及第点を点けてやることができない。邦題「虹を翔る覇者」を冠する名盤『RISING』に収録された、リッチー・ブラックモア、ディオ、そして死して尚超えるものなしと誉れ高い名ドラマー、故コージー・パウエルを含む本家の演奏が凄すぎることもあるのだが、梶山のギターソロもパッとしないので、尚のこと聴き劣りする。

このCDでライナーノーツを書いているBURRN!誌編集長の広瀬和生*4は自他共に認めるリッチー信者であるが、RAINBOWに関してはターナー期、それも'95年の再結成時代を除くとRAINBOW最後のアルバム『BENT OUT OF SHAPE』を名盤と掲げるセンスの持ち主である*5。その広瀬は、梶山や森川、或いは島紀史<G.>や下山武徳<Vo.>らを高く評価しているが、今回始めて森川のヴォーカルを聴いて納得できた部分がある。音楽評論における彼の態度(つまり、偏っている)に疑問の声は多いことも納得できた。

このカヴァーアルバムも、もしターナー期だけの楽曲で揃えたら、聴き手の印象は間違いなく良いものばかりになった筈だ。まあ、どうせこのテのアルバムを聴くのはリッチー教信者ばかりだろうから、大して問題ではないのかもしれないけど。

さて、最後に余談を付け加えておくと、その広瀬が日本のメタルが盛り上がらないことを嘆いているが、その理由は単に演奏者のヴィジュアルがカッコよくないからではないか。このアルバムのリーフレットには梶山や森川を始めとした演奏者のピンナップが掲載されているが、外国人のターナーやローゼンタールを除くと、本当にダサい格好のアンちゃんかオッサンばかりである。

私は最近の彼らは知らないが、少なくとも日本で売れるバンドは、少なくとも見た目が良くなければだめだ。B'zやTHE YELLOW MONKEYは見た目はよいのである(演奏も勿論文句なしによいのだが)。見た目がよければ演奏が下手糞でも売れてしまう日本の市場であるのだから――一時隆盛を極めた「ビジュアル系」*6の諸バンドが好例である。

私は巷に溢れる「日本のメタルはダメだ」論者の一人ではないと自負している――自負しているが、やはり「見た目が格好悪い」バンドは多いと思う。ビジュアル系もといV-ROCKはもはやギャグだが、とにかく日本人には長髪パーマは間違いなく似合わないので、それをやめるところか始めて貰いたい。

*1:ポニーキャニオン、1998年 ASIN:B00000JX5W

*2:http://www.mandrakeroot.co.jp/products/nijidensetsu.shtml』より引用

*3:この曲の邦題は「銀嶺の覇者」、このアルバムのタイトルの元ネタであろう。

*4:1960年生まれ、東京大学(えッ東大?)出身。

*5:私としては、まず冗長なインストルメンタル曲が2曲も入っているというのが、気に入らない。私がヘヴィメタル好きだということを差し引いても、やはりこのアルバムはちょっと攻撃力が弱いと思われる。

*6:ビジュアル系の見た目は、今から振り返るとギャグではないかと思える格好もあったと思うのは私だけだろうか?