またしてもラーメン

またラーメンを食べた話ですが、まあ聞いて下さい。今日は神田神保町古書店街の「古本まつり」の最終日で、友人(男)と一緒に出かけてきました。中途半端な小雨が降ったり止んだりしていましたが、終了の午後6時を迎えました。

そのあと「これからどうするか?」という話になり、歩いて行ける秋葉原に行くことにしました。新しくできたヨドバシカメラ秋葉原店を探検したあと、中央通りの電気店や書店などを巡っていましたが、秋葉原にある粗方の店舗が閉店する午後8時になりました。「晩飯どうする?」ということで向かったのは昭和通り沿い、総武線のガード下にある幸楽苑の平河町店*1に行きました。

「量の求道者」である私が注文したのは、みそラーメンの大盛りでした。この味が私にとっては郷土の味です。幸楽苑は私の故郷である福島県会津若松市発祥のラーメンチェーン店です。大学1年生で孤独だったとき、同郷の友人2人と、当時都内に数軒しかなかったうちの1軒、渋谷区道玄坂店にわざわざ行ったくらいです。

そして友人が注文したのは創業当時の味を再現したという「中華そば」でした。

ラーメンをすすりながら「今度の日曜日に彼女の実家に行かないとならなくなった」と彼は言いました。つい先頃、彼の恋人が妊娠していることがわかったのです。「ふーん、いよいよね」と私は言いました。私は彼の友人連中の中で最も早くその事実を聞かされていました(そして彼はあまり多くの人たちには語っていません)。

西洋思想を専攻し、生命倫理学も多少はかじっている私ですが、こういうとき、何も気の利いたことが言えないのです。理論家ではなく実践者を志す私ですが、21歳大学3年の若造が応対するには生々しすぎる現実でした。如何にスポーツ新聞の1面をできちゃった結婚の横行する現代社会と言えども、芸能人のそれはテレビの向こうの絵空事でしかなかったのです。

彼は子どもが生まれてくるのと同時に結婚したいと言っています。聞くところ彼の両親は反対しているらしく、彼は悩んでいました。私もここ数か月悩みを抱えており、彼に話を聞いてもらっていましたが、男2人がお互いに頭を突き合わせて解決しない問題に唸っている状況となってしまっています。

でも私は彼に言いました。「答えが見えている分だけ、君の方が俺より楽だと思うけどね。君は行くべき道が、茨の道だとわかっている。俺なんか五里霧中で視界0の深い霧の中を手探り手探りだぜ?(笑)」 彼も私の悩みを知っているので、笑いました。

「……でもまあ」と私は続けます。「俺は、一番弱い者の味方をしますよ。生まれてくるかもしれない子どもが幸せになれる方法を考えますよ」。彼は細い目を更に細くしながら「俺も〜」と言いました。

ガード上を走る総武線が音を立てながら走行し、秋葉原駅に停車していきました。店舗に微かな騒音と振動を伝えます。懐かしい郷土の味が、悩める私たちを暖めました。

*1:店名は「平河町店」ですが、JRや日比谷線秋葉原駅昭和通り口の真正面です。