日本全国のプロレタリアよ、団結せよ!

warunabeさん(id:warunabe)にコメントを頂きましたので、こちらの記事から取り上げたいと思います。

NIKKEI NET『パートの残業に5−10%の割増賃金・厚労省が検討』*1

厚生労働省はパートをはじめ短時間勤務の人たちが事前の契約より長く働いた場合、賃金を通常より割り増すことを企業に義務づける検討に入った。法律で定めている週40時間の上限以内でも「残業代」に5―10%程度の割増賃金を支払う仕組みを導入する。パート労働の時間を安易に延長することに歯止めをかける狙いだが、経済界からは労使が個別に協議すべき問題だという声も出ている。

 厚労省は正社員なども含めたすべての就業者の労働時間を定めた労働基準法を補う形での新法が必要になると判断。学識経験者や労使の代表からなる審議会で2006年初めにも議論を始める。07年の通常国会に新法案を提出し、08年からの新制度導入を目指す。パートのほかにもアルバイトや派遣など、勤務時間が短い労働者が対象になる。 (07:01)

近年「派遣社員」など、正社員以外の雇用形態が増えていることに対して、ご覧の皆様はどのように考えられていますでしょうか。学生や有閑主婦が遊ぶ金を稼ぐために、余暇を労働に充てるパートタイマー(短時間労働者)はさして(全く)問題ではありません。例えば一家の家計を支えるべき立場の人が、正社員の職がなく、やむなく低賃金の短時間労働をせざるをないという場合などです。

社会学者の山田昌弘も著書『希望格差社会*2で述べていますが、「雇用の不安定化が生じたのは、日本経済の不況が原因であり、景気が回復すれば、自然と問題は解決する」(P.100)という考えは全くの誤解です。「産業システムの構造変動」(P.101)がその理由です。つまり、製品価格(もしくはサーヴィス価格)などを押さえるために低廉な労働力を必要としてるのです。引用記事中にも「経済界からは労使が個別に協議すべき問題だという声も出ている」とあるように、低廉な労働者により多くの金を払わなければならないことは、雇用者にとって死活問題なのです。何故なら安い賃金しか支払われていない労働者は、安い品物しか買わないのですから。マクドナルド、ユニクロダイソー他100円ショップなどの低価格を売りにした小売店の台頭が、それを如実に示しています。

こうした弱い労働者を助ける法律が制度化されることは、私は評価に値すると思います。warunabeさんは労使交渉の非対称性を解決するために「非正社員労働組合」を作ることを提案していますが、これは確かジャーナリストの斎藤貴男が『機会不平等』*3で言っていたと思うのですが、非正社員は就業目的が人によってかなり違う(家計を支えるためなのか、学生の遊ぶ金ほしさなのか)ので、労組設立はなかなか難しい(就業目的〔イデオロギー〕の垣根を越えて団結することができない)のです。

しかし本来ならば、warunabeさんの仰る通り、自分の身は自分で守るべきなのです。権力者(雇用者、政府など)の好きにさせておいてはいけません。カール・マルクスの『共産党宣言』から有名な結びの一節をもじって、本稿の結びといたしましょう。「日本全国のプロレタリア(被雇用者)よ、団結せよ!」(05年10月21日 校了

*1:http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051018AT1F1702017102005.htmlより引用(09年2月12日現在、確認不可)。

*2:筑摩書房、2004年 ISBN:4480863605

*3:文藝春秋、2000年(文庫化は2004年) ISBN:4167443031