仁義なき高速バス戦争

電車、とりわけ新幹線に乗ったことがある人は多いと思いますが、高速バスを利用したことがない人は存外多いのではないでしょうか。私は福島県への帰省を中心に高速バスを利用します。今まではJRバス関東JRバス東北福島交通が共同運行する
「あぶくま号」(新宿〜郡山・福島)*1によく乗っていたのですが、今夏の帰省にはさくら観光が主催する「東京シティライナー」(東京〜郡山・福島)*2を初めて利用しました。前者が新宿〜郡山間で片道4000円(往復だと7200円)なのに対し、後者は東京〜郡山で何と2000円。東北新幹線の上野〜郡山間では7770円なので、「あぶくま号」でも十分安いと思っていたのですが、「東京シティライナー」の安さには恐怖すら感じてしまいます。新幹線には高くてもはや乗っていられません。

常々私は最も効率的な移動方法の探究に余念がないのですが、今夏は仙台や名古屋にも行く用事があり、最近は高速バスの競争が相当激化し、安い金額で利用できることを知りました。

そんなところに、以下の新聞報道です。

MSN-Mainichi『JR西系バス:東京ー大阪間、最安2100円 11月から』*3

JR西日本系の「西日本ジェイアールバス」は30日、東京と大阪を最安運賃2100円で結ぶ夜行高速バスを11月から運行すると発表した。満席時にのみ発売される補助席利用客向けに限定した運賃だが、同区間は旅行代理店がツアー形式で運行するバス便の安価な運賃に押され気味だけに、起死回生となるか注目される。

同社は同区間で現在、運賃の高い横3列シート車(片道8610円)と、安い同4列シート車(同5000円)を運行。増便する4列シート車を「超得割青春号」と銘打って片道4200円に値下げし、さらに補助席の利用客を半額とする。

2100円は、JRの普通電車だと東京から静岡・沼津周辺まで、大阪からは岐阜・関ケ原周辺くらいまでしか行けない料金。ただし満席時のみの発売のため、最初から補助席の予約はできない。

3月までの金・土曜日と休日など週末の夜を中心に東京・大阪両駅から各1便運行する。

「超得割青春号」の通常運賃4200円自体も、ライバルの路線バス各社に比べ最安値という。

同社は「補助席を使う変則的運用だが、利用状況次第で増便も検討する」と話している。【本多健】

毎日新聞 2005年9月30日 22時35分

ご存知補助席は決して乗り心地のいいものではありません。乗りたがるのは、遠足に行く小学生くらいです(笑)。おまけに座席にはドリンクホルダーや小物をいれるポケットもないでしょうから、長時間座るのに適した座席ではありません。

補助席利用に限るとはいえ、恐らく需要は高まっていくと思います。私のような貧乏学生などが旅行するときには重宝されると思います。恐ろしいことに、慣れてしまうと平気になってしまうのです。テレビ番組「水曜どうでしょう*4の出演者たちは番組企画で長距離移動の夜行バスに幾度と乗車して「やられて」(座りっぱなしで眠れもせず、疲労困憊になって)いますが、彼らにはこの席にも是非乗ってほしいですね。

さて、引用記事中に「旅行代理店がツアー形式で運行するバス便」とあるところにご注目ください。私家版の分類ではありますが、高速バスにも2種類あるのです。1つは路線バスで、「あぶくま号」はこれに当たります。料金設定にも関係省庁(恐らく国土交通省)の認可が必要になるでしょう。それ故運行会社が違っても、始点と終点が大体同じような地域であれば、ほぼ同じ料金になります。例えば郡山〜仙台間でも、JRバス東北宮城交通福島交通の路線*5と、桜交通と富士交通の路線*6で同じ片道1800円となっています*7

そしてもう1つが「ツアーバス」です。先に述べたさくら観光の「東京シティライナー」はこれに当たります。恐らく路線バスの料金は、鉄道(JR)の同区間普通運賃を元に設定されているよう*8で、監督省庁がある以上逸脱できません。しかしツアーバスは、自由な料金設定ができます。「東京シティライナー」の2000円という値段は、恐らくただ単にライバル「あぶくま号」の半額というだけではないでしょうか。

路線バスとツアーバスでは、勿論違いがあります。専門家ではないので詳しく述べることはできませんが、恐らく対応する法律が異なるみたいです。具体的な事例を述べますと、切符を払い戻しするときに、路線バスでは数百円の手数料だけで済みますが、ツアーバスでは出発日の何日前かによってキャンセル料が発生、変動します。

とはいえ、実際に乗車した感想としては、どちらも大して変わりません。少なくとも「あぶくま号」と「東京シティライナー」に関しては、そうでした。ツアーバスの方が、遅刻者に対して柔軟な対応をするというくらいです。しかし欠点は、ツアーバスは本数で路線バスにどうしても負けてしまうのです。本数が増えると、ツアーバスはもっと便利になるでしょう。私は、安い方を選びます。

*1:http://www.fukushima-koutu.co.jp/ride/highway_bus/abukuma.html(09年2月12日現在、確認不可)

*2:http://www.sakura-tour.jp/tokyocityliner/main2-2.html(09年2月12日現在、確認不可)

*3:http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20051001k0000m040119000c.htmlより引用(09年2月12日現在、確認不可)。

*4:[水曜どうでしょう official website]

*5:http://www.fukushima-koutu.co.jp/ride/highway_bus/k-sendai.htmlより引用(09年2月12日現在、確認不可)。

*6:http://www.sakurakotsu.com/price.html

*7:但し、後者の路線は05年10月13日以降は運行を休止するそうです。

*8:新宿〜郡山間の鉄道普通運賃は3890円。