スーパーフリーなバカ慶応大生

スポーツ報知『「社会的道義を理由に」ミス慶応来月開催』*1

慶応大学の公認サークル「広告学研究会」に所属する学生が全裸で駅構内を走り回ったとして公然わいせつの容疑で10人が書類送検された問題で、同研究会は25日までに運営する「ミス慶応コンテスト」(11月20〜23日)を予定通り開催することをホームページ(HP)で発表した。

HPによると、「協力団体との社会的道義を理由に実施を決定した」としてしている。また、このコンテスト以外のすべての活動を無期限で自粛するという。事件後には、コンテストの中止を求める声がOBらからあがっていた。

同研究会は、1924年に創立。同コンテストは75年から始まり、今年で26回目。在学女性4〜6人の候補者からグランプリを選出する。99年の中野美奈子(フジ)、00年の鈴江奈々(日テレ)、01年の青木裕子(TBS)、04年の秋元玲奈(テレ東)、06年の竹内由恵(テレ朝)ら、入賞者からは多くの女子アナを輩出している。

「広告学」などという存在しない学問の名前を冠した学生団体の構成員が起こした事件としては、公共の場所をフルチンでスーパーフリーに走り回り、あまつさえそれをヴィデオで撮影するというのは、あまりにもピッタリだとしか言いようがない。彼らは(時として低俗と貶められる)バラエティ番組を製作するテレビ局や製作会社の社員の真似事をしたかったのだろう。局部へのモザイクは、あとでヴィデオを編集するときに補えばいいとでも思っていたのだろう。もっとも、彼ら自身や、彼らが所属する団体、そして何よりも彼らが在籍している大学に、彼ら自身によって塗りつけられた汚名は、もはや編集不可能なものとなってしまっているが。

在京の私立大学に散見される「広告(学)研究会」というサークルは、その大体が、学園祭などでミスコンなどの注目度が大きい、テレビ番組のような、あるいは広告代理店が企画しそうなイヴェントを企画する「イベントサークル」(イベサー)である。なぜその構成員がこのような大きなイヴェントを運営しようとするかというと、取りも直さず、その実績が就職に役立つからである。彼らは「広告学」などという新しい学問を標榜して打ちたてようとも、それを研究して修めようとも思ってはいない。彼らは恐らく、テレビ局やマスコミ、広告代理店などの難関だが花形の企業に就職したくてしたくて堪らないのだろう。強いて言えば「広告学」とは、それらの企業に就職するための新しい学問である。慶大の広告学研究会に関して言えば、その責任者を商学部の教員(斎藤通貴准教授)が務めていることに、その団体が就職を強く意識していることが典型的に表れている――こういうサークルの大学当局側責任者を、ドイツ文学の教員が務められるだろうか。わたしにはちょっと想像できない。

慶大の広告学研究会がその初志を貫徹して、あくまでもテレビ局や広告代理店の真似事をし続けたいのならば、ミスコンも当然中止すべきである。連中が本当に「社会的道義」を痛感しているのであれば、なおさらだ。手元の広辞苑によれば、道義とは「人の行うべき正しい道。道徳のすじみち」とある。このバカ学生どもは、日本語の言葉の意味すらわかっていないらしい。ミスコンの協賛企業もまた「社会的道義」という言葉を理解しているのであれば――まあ、“名門の”慶大の卒業生も社員を採っているんだろうから、わからないわけないでしょうけど――、ミスコンの協賛から引き上げるべきである。

もしかすると、協賛企業が13社あった08年のミスコンと比べて*2、本稿執筆時点(10月27日)で09年は2社しかないところを見ると*3、この事件を受けて本当に協賛を引き上げた企業があるのかもしれない(不況のためとも考えられるが)。もしそうであるならば、それらの企業はちゃんと「社会的道義」というものを理解している。福助株式会社および株式会社ニッセンが未だに協賛に留まっているせいで、同研究会がミスコンを中止にできないのならば、2社は協賛をやめ、彼らにきちんと「社会的」責任をとらせることが、企業としての「社会的道義」であろう。

ついでに言えば、同研究会は今回の事件の責任をとって「ミス慶應コンテスト2009以降全ての活動の無期限自粛」をすると同時に「代表を含む常任委員の総辞職」するそうだが、果たして後者のどこが、同研究会にとって痛手となる反省の仕方だろうか。代表も常任委員も間違いなく慶大の学生であり、それらの職は恐らく無給であろう。学生がサークル活動の一環でやっていた活動の役職をただ降りるだけである。しかも、今回「総辞職」する代表や常任委員の名前はおろか学年、在籍学部は一切明らかになっていない。「総辞職」と言えば、経営者や内閣の責任の取りかたと似ていて、その点でもやはり同研究会は企業の真似事をやっていると強く意識していることを示唆させるのだが、代表や常任委員の連中が本当に責任をとる気があるのだったら、自分たちの名前を公表し、半年なり1年なりの「自主停学」をすべきだろう――そんなことをする気はないわよね。だってキミたちはどうしても花形のマスコミや広告代理店に就職したくてしたくて堪らなく、自分たちの経歴に傷がついて就職に不利になるようなことはするわけがないんだから。

今回の事件に関して、同研究会は十分な責任をとって反省しているとは言い難い。もし本当に反省しているのであれば、ミスコンを含めた即時の無期限活動停止、「総辞職」する学生側責任者の実名と、彼らに代わって学生側責任者に就任する学生の実名を明らかにし、当局側責任者である斎藤准教授の処分がなされるべきである。それが、同研究会と慶大に求められる「道義的責任」である。