円高なので

ハンナ・アーレントの原著を大量に購入した。計8冊、12565円である(1ユーロ127円、1米ドル90円で計算している)。その内訳を見てみよう。

  • Arendt, Hannah: Macht und Gewalt. Piper, 2006.
    • 邦題『暴力について』のドイツ語版。Gisela Uellenberg訳、著者監訳。
      • 8ユーロ、1066円
  • Arendt, Hannah: On Violence. Harcourt, 1970.
    • 邦題『暴力について』の英語版。
      • 12米ドル、1020円(1割引)
  • Arendt, Hannah: Eichmann in Jerusalem. A Report on the Banality of Evil. Penguin Classics, 2006.
  • Arendt, Hannah: Eichmann in Jerusalem. Ein Bericht von der Banalität des Bösen. Piper, 2006.
  • Arendt, Hannah: Elemente und Ursprünge totaler Herrschaft. Antisemitismus, Imperialismus, Totalitarismus. Piper, 2001.
    • 邦題『全体主義の起原』のドイツ語版。
      • 22.90ユーロ、3053円
  • Arendt, Hannah: The Origins of Totalitarianism. Harvest Books, 1973.
    • 邦題『全体主義の起原』の英語版。
      • 19米ドル、1615円(1割引)
  • Arendt, Hannah: On Revolution. Penguin Classics, 2006.
    • 邦題『革命について』の英語版。
      • 16米ドル、1360円(1割引)
  • Arendt, Hannah: Between Past and Future. Eight Exercises in Political Thought. Penguin Classics, 2006.
    • 邦題『過去と未来の間』の英語版。
      • 16米ドル、1360円(1割引)

アーレントは初め英語で書いた著書を、すぐさまドイツ語に自ら翻訳、加筆して出版する。他人に翻訳を任せた場合でも、自ら加筆する場合があるようである。そのためわたしは基本的にアーレントの著書は、彼女自身によって書かれたか、監訳されている場合に限って英独版の両方を購入する。

買いも買ったり8冊である。もちろん円高のおかげで買いやすかったこともあるが、しかもわたしが利用した紀伊国屋書店BookWeb*1は、5000円以上購入すると国内送料無料になるのである。つまり、海の向こうから送ってくれるその空輸代もチャラにしてくれるのだ。たとえばドイツのインターネット書店buch.de*2に注文して日本に送ってもらうと、15ユーロ(1905円)もかかってしまうのである。これはバカバカしい。さらに紀伊国屋は、イギリスかアメリカから取り寄せる書籍の場合は、1割引きしてくれるのである。

洋書を買うなら今、注文するなら紀伊国屋書店をお勧めする。

絶版の謎

しかし、今回一番ほしかったのは『革命について』のドイツ語版であるÜber die Revolution.は絶版、品切れになっているらしく、amazon.deでも超高値で古本が出品されている。また『過去と未来の間』のドイツ語版であるZwischen Vergangenheit und Zukunft. とそれに連なる著作であるらしいIn der Gegenwart.はドイツ国内の市場には在庫があると思われるものの、出版元のPiper出版社のオンラインカタログにはすでに掲載されていない*3

ペーパーバックであるにもかかわらず、絶版ということは、やはりアーレントはドイツ語作家としての受容が低いということだろうか。そうではあるまい。英独版の双方を比較対照すればわかるが、ドイツ語版のほうが加筆されていることもあり、内容的に充実しているのである。なによりもアーレントは、自らをユダヤ人であると自覚していた一方で、しかし母語であるドイツ語には終生こだわった人物だった。それにもかかわらず、彼女のドイツ語作家としての側面を死に追いやるということは、Piperは出版社としての責任を果たしているとは言えない。

頭にきたから、Piperにメール送ってやろう。


(08年12月29日追記)紀伊国屋書店に、洋書を追加注文した。週が変わり、1ユーロ128円、1米ドル91円になってしまった。

  • Arendt, Hannah: Der Liebesbegriff bei Augustin. Versuch einer philosophischen Interpretation. 2005.
  • Arendt, Hannah: Love and Saint Augustine. 1998.
    • 邦題『アウグスティヌスの愛の概念』の英語版。著者による監訳および加筆。
      • 18米ドル、1547円。

結局10冊、16772円になってしまった。しかしながら、金持ちは物価が下がるとむしろ消費をしないらしいが、貧乏人は今この物価下降のときこそ消費をすべきだと思うのだ。